<社説>教育・子育て衆院選 格差解消など具体策示せ


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 少子高齢化が進み、将来の沖縄を担う人材として子どもたちをどう育てていくのか。衆院選でも教育・子育て支援策は重要な争点だ。沖縄選挙区に立候補している9人全員が待機児童解消など子育て問題を公約に掲げている。

 政府は8月、貧困家庭の子どもの教育や生活を支援するため、初めて「子供の貧困対策大綱」を決定し、改善に取り組むとした。しかし数値目標は盛り込まず、改善は見通せない。表明だけで足踏みしている場合ではない。今すぐ貧困の連鎖を断ち切る具体的な対策を進めるべきだ。
 日本の子どもの貧困率は2012年が6人に1人(16・3%)で過去最悪となった。経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の中で25位(10年時点)と最低水準にある。貧困家庭の多くがひとり親世帯で、大半が母子世帯だ。
 県内のひとり親世帯は13年8月時点で3万4806世帯と過去最多を更新した。世帯率も全国の2倍で最も多い。非正規労働者の割合も全国で最も高く、県内は子どもの貧困問題がより深刻だ。国政の場で重点的に取り組んでほしい。
 11年の国内総生産(GDP)に占める学校などの教育機関への公的支出を見ても、日本は3・6%で、データが比較可能なOECD加盟31カ国の中で5年連続最下位だった。将来を担う子どもの教育への財政投入が貧弱なままで、果たして先進国といえるのか。
 政府は来年4月に「子ども・子育て支援新制度」を始動させる。待機児童を解消する保育の受け皿づくりなどで年間7千億円を振り向ける予定だ。財源は消費税率10%引き上げによる増収分を充てるはずだった。しかし再増税延期で予算確保は見通せていない。
 県内の14年度の「潜在」を含む待機児童数は1万8827人。県は新制度に伴う全市町村の需要調査を踏まえ、17年度末までに解消を目指す計画だ。保育所などの定員数を14年度の3万6401人から17年度には5万7760人まで増やす。そのためには新たに常勤の保育士2262人の確保が必要だ。国の財政支援が不可欠なのは言うまでもない。増税ではなく、公共投資削減などで重点的に振り向けるべきだ。
 教育・子育て支援は子どもの将来への投資だ。日本の明るい未来を築く上で重要な政策だ。各候補者は格差解消など、さらに具体的な施策を有権者に示してほしい。