<社説>「オール沖縄」全勝 犠牲強要を拒む意思表示 「見ぬふり」の壁に穴を


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 これ以上ない明確な審判が下った。民意は誰の目にも明らかだ。

 米軍普天間飛行場の県内移設に反対し、翁長雄志知事を誕生させた「オール沖縄」勢力が衆院選で県内4選挙区全てを制した。これに対し、県外移設の公約を破り、辺野古移設を認めた自民党議員は全員、選挙区で落選した。全国では自民が圧勝する中でのことだ。
 歴史的局面と言っていい。名護市長選、知事選と考え合わせると、保革の隔たりを超え、沖縄は一体で犠牲の強要をはねのけると意思表示したのだ。もう本土の犠牲になるだけの存在ではないと初めて宣言したのである。

早速の言明

 それなのに、この政権の傲岸(ごうがん)な姿勢はどう評すべきだろう。
 安倍晋三首相は開票当日、「説明をしっかりしながら進めていきたい」と、なお新基地建設を強行する考えを示した。翌日には菅義偉官房長官も、沖縄の自民党候補全敗について「真摯(しんし)に受け止めるが、法令に基づき(移設を)淡々と進めていきたい」と述べた。
 まるで沖縄には彼らが相手にする民意など存在しないかのようだ。米軍基地を置く領土だけがあればいい、住民の意思など邪魔だとでも言うのだろうか。中国政府がウイグル自治区やチベットでしてきたこと、最近の香港で行ったことと何が変わるのか。
 問題は、この沖縄への犠牲の強要が、安倍政権の体質に由来するだけではないという点だ。
 世論調査をすると、沖縄では辺野古移設への反対が常に7~8割を占めるのに対し、全国では賛成が反対を上回ることもある。
 海兵隊の適地は沖縄のみ、という考えが背景にあるが、思い込みにすぎない。移動手段を考えれば北部九州に置く方が合理的だ。事実、沖縄の基地問題が浮上した1996年にも、2005年の米軍再編協議でも、当の米国が海兵隊の本土移転を打診している。だが日本側が拒んだというのが実態だ。
 尖閣問題を抱え、海兵隊が必要というのも誤りだ。日米の外務・防衛閣僚が交わした正式文書は島嶼(とうしょ)防衛を米軍でなく日本のみで対処する分野と定める。米軍が対処するなどあり得ないのだ。
 こうした事実は全国ではほとんど報じられない。報道機関の責任もあるが、結局のところ、国民は「見たくない真実」から目をそらしている。日本全体が、米軍が身近にあるのは困る、置くなら沖縄で、と無意識に考えていることの反映と言えば言い過ぎだろうか。
 だから政府の辺野古移設強行に国民の反発は少ない。沖縄への犠牲の強要は、安倍政権だけでなく日本全体の「見て見ぬふり」に由来すると考えられるのである。

分断統治

 「オール沖縄」で勝利した翁長新知事も、今回の4選挙区で当選した議員たちも今後、この強固な「見て見ぬふり」の壁に立ち向かわなければならない。壁の厚さを考えれば並大抵のことではない。
 懸念されるのは沖縄側の亀裂だ。政府が沖縄の民意を顧みない現状はまるで植民地のようである。古今、植民地側の民意が割れていることほど宗主国を喜ばせることはない。だから宗主国は常に分断を狙い、植民地側の傀儡(かいらい)を優遇して「分断統治」を図るのだ。
 今回の選挙で奇異なのは小選挙区で落選した議員が全員、比例で救済され、復活当選したことだ。有権者の審判と逆の結果が生じたという意味で、現行選挙制度の問題が極端な形で表れたといえる。
 復活当選した自民党議員たちは今後選択を迫られる。比例区当選者として政府の代弁者となるか、沖縄の民意を体現するかだ。言い換えれば、日本への過剰同化を進めて「植民地エリート」となるか、誇りある立場で沖縄の自己決定権獲得に貢献するか、である。
 採るべき道は自明だろう。新知事も議員たちももう一度結集し、手を携えて、沖縄に犠牲を強要する「見て見ぬふり」の壁に穴をうがってほしい。
英文へ→[Editorial]All four candidates opposing construction of a new base win the Okinawan seats in the House of Representatives election: declaration of intent against unreasonable U.S. base-hosting burden