<社説>15年度沖縄予算 政権圧力の限界露呈 知事は泰然と県政運営を


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 2015年度の沖縄振興予算案が前年度比4・6%減の3340億円に決まった。前知事が「いい正月になる」とうそぶいた14年度は過去にない厚遇だったが、13年度に比べると11・3%増となっており、むしろ本来の形に戻ったと解釈するのが妥当だろう。

 安倍晋三首相は、普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する翁長雄志知事との面談を拒むなど冷淡な姿勢を取り続けており、予算面でも減額方針を示していた。ただ、日本の予算は各省庁の積み上げ方式となっているため、政治的圧力にはおのずと限界もある。翁長知事はこれまで同様、泰然と構え県政運営に当たってほしい。

補償型政治に見切りを

 15年度予算は、14年度の3501億円から金額にして約162億円の減少となった。12年度から創設された沖縄振興一括交付金が141億円減の1618億円、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の関連予算が31億円減の167億円となったことが主な要因だ。
 ただし、13年度と比較すると一括交付金は5億円増、OIST関連は64億円増となる。恣意(しい)的な予算措置が比較的に取りやすい両事業で、増減幅を調整したと見るべきだろう。
 一方、15年度予算で内閣府は、一括交付金の減額理由について、公共事業中心のハード交付金、県側が戦略的に取り組むソフト交付金のいずれも未執行予算が多いことを挙げた。
 確かに制度創設の初年度こそ、ハード、ソフトとも年度内執行率は4~5割にとどまったが、繰り越し後は着実に執行している。13年度からは年度内執行率も改善傾向にある。してみると、内閣府が「不用額」を口実に予算削減を図ったと、うがった見方もできなくもない。もちろん、昨年は甘かった査定が厳格化された側面もあろう。今後、事業の執行率を高めていく県側の取り組みも問われる。
 あらためて振り返ると、概算要求額を上回った14年度予算の異様ぶりが際立つ。辺野古埋め立てを承認した前知事への「ご祝儀」の意味合いがあったことは明白だ。基地受け入れの見返りに振興予算で応える「アメとムチ」の手法そのものであり、「補償型政治」の典型だ。
 時代錯誤も甚だしいが、安倍首相や菅義偉官房長官らの沖縄に対する対応は、旧態依然として何ら変わっていない。しかしながら、県民の代表である翁長知事を力ずくで屈服させることはもはや不可能だ。翁長知事をことさら冷遇し、あたかも沖縄予算を政権の意のままにできるかのような印象操作は即刻やめるべきだ。

予算の内実 問い直せ

 本来ならば、沖縄側も振興予算の増減に一喜一憂するのでなく、それこそ内実を問い直すべきだ。
 とりわけ沖縄振興一括交付金制度の検証と見直し作業が不可欠だ。制度創設は、沖縄の自立度を高めるため、地方の自由裁量を認め、実需に合った予算編成を可能にすることが狙いだったはずだ。
 しかしながら、使い勝手こそ多少は良くなったとはいえ、省庁縦割りのひも付き補助金であることに本質的に相違はない。一般財源で、使い道が限定されない地方交付税とは性格が大きく異なる。沖縄一括交付金は、自由裁量を担保する制度の再設計が急がれる。
 一般会計総額が96兆3420億円と過去最大に膨らんだ政府予算においても、内実を問うべきことは多い。
 特に3年連続の増額となった防衛費は4兆9801億円と過去最大を更新した。防衛力強化を掲げる安倍首相の意向を強く反映したためだが、財政再建から懸け離れた大盤振る舞いだ。
 公共事業費も増えた。昨年4月の消費税8%への増税は、ばらまきのためか、との疑念も募る。3兆円超の14年度補正予算を合わせると、予算規模はほぼ100兆円に膨張する。財政規律の緩みは極めて深刻と憂慮せざるを得ない。