<社説>県内求人倍率最高 質の向上に目配り必要


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 県内の雇用環境の改善が続いている。

 2014年の県内有効求人倍率(季節調整値)は前年比0・16ポイント上昇の0・69倍で沖縄が日本復帰した1972年以降、過去最高値を更新した。昨年12月の県内有効求人倍率(季節調整値)も前年同月比0・03ポイント増の0・80倍となり、復帰後初めて0・8倍台になった。
 雇用の量の拡大は歓迎だが、正社員を希望しているにもかかわらず、非正規雇用で働かざるを得ない労働者も多い。求職と求人の条件が合わない「雇用のミスマッチ」を解消し、質の向上に目配りする必要がある。
 14年の県内入域観光客数が初めて700万人を突破し、卸売業・小売業が好調を維持している。昨年12月の有効求人倍率(季節調整値)を産業別で見ると、卸売業・小売業の求人が前年同月比59・7%、生活関連サービス業・娯楽業が51・9%、宿泊業・飲食サービス業が44・2%増加した。
 求人倍率上昇の背景に、観光や福祉など幅広い業界で人手不足が深刻化していることがある。
 大型連休前にイオンモール沖縄ライカムがオープンする。雇用3千人。求人募集チラシに時給750円、950円、千円と県内の最低賃金を大幅に上回る額の提示が相次ぐ。沖縄ライカムの高水準の給与による求人のあおりを受け、自社のパートへの応募が芳しくない企業も出始めた。
 県内で人材獲得競争が激化している中で、求職と求人の条件が合わない「雇用のミスマッチ」をどう解消していくのかが課題となっている。
 沖縄労働局によると、企業が正社員で募集した場合と、非正規で募集した場合の「充足率」(13年度)を比べると、正社員求人は42・9%だが、非正規求人は6・3%にとどまる。企業にとっても、正規で募集したほうが、人は確保しやすいのではないか。
 県商工労働部長の下地明和氏は「沖縄は企業の売り上げに占める人件費率が全国と比べて低い」と指摘している。沖縄はほとんどの企業が中小零細なので人件費の高い正規求人は難しい、という説明はあまり説得力がないようだ。
 雇用のミスマッチを解決するために企業努力を求めたい。同時に、賃金底上げなど非正規の処遇を改善するために、国と県のきめ細かな労働政策が不可欠だ。