<社説>イスラム国対策 攻撃ではなく人道支援で


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 過激派「イスラム国」は拘束中のヨルダン軍パイロットを殺害し、その映像をインターネット上で公開した。生きたまま焼き殺すという残忍さである。

 安倍晋三首相は「許し難い暴挙を断固非難する」との声明を発表した。オバマ米大統領の提案で18、19の両日、米ワシントンで開かれるテロ対策会議にも閣僚らを参加させる考えを表明した。
 安倍首相のイスラム国に対する非難は国民の多くが共有するだろう。テロ対策の強化に向けて、日本が国際社会と連携していくことも当然のことである。
 ただし連携に当たっては、日本が果たすべき役割は何かをしっかり見定める必要がある。米英など有志国連合の攻撃とは明確に一線を画し、人道支援に徹するべきだ。
 有志国連合が行うテロ対策は空爆など軍事行動が柱であり、一般市民が被害を受けることは避けられない。米国も「いかなる軍事行動でも民間人が巻き込まれ死傷するリスクがある」(パワー米国連大使)と認めている。
 イスラム国空爆は昨年8月以降、米メディアによると2千回を超えている。この間、多くの一般市民が犠牲になったことは容易に想像がつく。
 何の罪もない子どもを含む市民が犠牲になる空爆を正当化できる訳がない。国際社会はイスラム国の資金源を断つことや雇い兵志願者を出さないことに全力を挙げるべきだ。
 パイロット殺害後、ヨルダン当局は報復としてイスラム国が釈放を求めていた死刑囚2人を直ちに処刑した。イスラム国はパイロット殺害映像の最後で、空爆に参加しているヨルダン軍パイロットとされる男性らの名前や顔写真、自宅地図を映し、殺害を呼び掛けている。
 「憎しみの連鎖」「報復の応酬」が懸念される事態であり、それをエスカレートさせるようなことがあってはならない。
 安倍首相は邦人2人が殺害されたとみられる事態を受けて「罪を償わせるために国際社会と連携していく」と表明した。
 イスラム国はこのメッセージを宣戦布告と判断し、空爆を続ける有志国連合に日本も入ったと受け取る恐れがある。話し合いで解決できる相手ではないだけに、安倍首相は発言に慎重であるべきだ。