<社説>F15部品落下 惨事の予兆と受け止めよ


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 航空機から5キロを超える部品が落ち、地表や海面に激突する際の衝撃はいかばかりか。米軍にはこうした危険性への想像力と、軍用機の運用当事者としての適格性が欠如しているとしか思えない。

 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が訓練中に重さ5・4キロの部品を落とした。県民の生命に関わる惨事を招きかねない重大な事故である。
 落下したのは、機体後部で直立する垂直安定板の先端部分にある金属製の円すい形の部品だ。米軍は原因について「素材の不具合」とし、整備兵に「部品を注意して見るよう」指示したという。不具合がある部品なら「注意して見る」だけでことが済むのか。
 直ちにF15を含む全機種の飛行を停止し、米軍は目に見える形の再発防止策を示す責務がある。
 それにしても米軍の安全管理体制はどうなっているのか。2014年、嘉手納所属のF15だけでも5件の部品落下事故を起こしている。極めて異常な頻度だ。桑江朝千夫沖縄市長が「あきれて言葉が出てこない」と吐き捨てたが、多くの県民の思いを代弁していよう。
 緩みきった安全管理体制の下、このままでは人命を脅かす重大事故が住宅地域で起きかねない。大惨事の予兆と受け止めるべきだ。
 もはや、米軍が紋切り型で繰り返す「再発防止の徹底」という説明で済ますわけにはいかない。
 嘉手納基地に配備されているF15は古い型も残り、機体の老朽化が進んでいるとの指摘がある。
 飛行停止を伴った当該部品の総入れ替えが必要ではないか。さらに踏み込んで日常の整備体制の総点検、老朽化との関連性など、米軍は地元が抱く懸念に対する詳細な説明を一刻も早くなすべきだ。
 先月15日には普天間基地所属の海兵隊のAH1攻撃ヘリが渡名喜島・出砂島(入砂島)周辺の訓練空域を飛行中、200キロを超えるミサイル発射装置などを落下させた事故が起きて日も浅い。空軍も緊張感を持って機体の運用に当たるのが当然だろう。
 人身を傷付けたり、県民の財産を破損したりする事故でなかったことで、米軍は事故を軽視しているのではないか。
 部品落下が頻発している責任は、基地を提供している日本政府にもある。沖縄防衛局、外務省沖縄事務所はこれまで以上に強い姿勢で米軍に再発防止を迫るべきだ。