<社説>18歳選挙権 市民性教育の充実が鍵だ


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 選挙権年齢を現行の20歳以上から18歳以上に変更する公選法改正案が今国会で成立の見通しとなった。むろん賛成だ。選挙権だけでなく被選挙権も引き下げるべきだ。

 選挙権年齢引き下げをめぐっては「社会的経験の浅い若者には政治的判断力が乏しい」との理由で反対する意見もある。だが政治的判断力は年齢に比例するというより、主権者意識の有無にかかわりがある。
 その意味で市民性(シチズンシップ)教育が鍵を握る。地域社会の課題を自ら探り、その解決策を論議し、合意を形成し、実行して解決する。児童・生徒がそんな過程を経て自治の価値をわが身で体感すれば、政治への関心はおのずと高まり、政治意識も研ぎ澄まされ、判断力が身に付くはずだ。
 日本では教育の場から政治の要素が過度に排除され、自治や政治が遠ざけられた感がある。だが市民性教育こそ教育の根幹、「生きる力」の養成であるはずだ。格段の充実を求めたい。
 世界的には18歳選挙権が標準だ。国立国会図書館の2008年のデータによれば、189カ国・地域のうち170カ国・地域で選挙権は18歳以上。先進国で18歳に選挙権がないのは日本と韓国だけだ。むしろ欧州では16歳以上へと引き下げる動きが活発になっている。
 中学や高校を卒業し、20歳前に就業して税金を納めている人は日本でも大勢いる。納税の義務は負わされるのに政治参加の権利がないのは明らかに不公平だ。被選挙権を引き下げるべきだという根拠もそこにある。
 若者の政治離れが指摘されて久しい。確かに投票率は若年層ほど低い。だからこそ、充実した市民性教育を受け、社会的責任を自覚してから間を置かずに選挙権を与えたい。政治離れに歯止めをかけられるはずだ。諸外国では20代より10代の方が投票率は高いという事実が、それを裏付けている。
 年齢引き下げは何より世代間の不平等解消に役立つはずだ。社会保険などの負担の世代間格差は歴然としている。若年層の投票が増えれば、高齢層に偏っているとされる社会保障政策が、より世代間の均衡が取れた方向に変わるに違いない。
 この社会は構成員全てのものだ。一部の政治家や官僚のものではない。市民性教育の充実、投票率向上により、政治的決定を市民の手に取り戻したい。