<社説>県政運営方針 知事の指導力に期待 辺野古移設阻止に全力を


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 翁長雄志知事は県議会2月定例会で2015年度県政運営方針を説明し、「県民の期待に沿うべく、公約の実現に向けて全力で取り組む」との決意を表明した。

 県政には米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題解決や産業振興、子育て支援の拡充などさまざまな課題が横たわる。知事には県政運営方針に込めた課題解決への意気込みを成果につなげることを求めたい。
 県の組織全体で課題に取り組む万全な態勢づくりの確立が県政運営方針実現の鍵となる。知事の指導力に期待したい。

事態逼迫 次の矢を

 県にとって喫緊の課題は、普天間飛行場移設問題である。
 知事は県内全41市町村長が署名した「建白書の精神に基づき」対応する考えを示した。「辺野古に新基地は造らせないということを県政運営の柱にし、普天間飛行場の県外移設を求める」との強い決意も示した。辺野古移設阻止に全力を挙げてもらいたい。
 それには新基地建設に向けた国の作業をどう押しとどめるか、事態をどう打開するかが問われる。
 安倍晋三首相は昨年の知事選などについて「選挙結果は真摯(しんし)に受け止めたい」とする一方で「抑止力維持と普天間の危険性除去を考え合わせたときに唯一の解決策だ」と繰り返す。辺野古移設を推し進める姿勢を変えていない。
 抑止力の虚構性は日米の専門家がこれまで指摘している通りである。「唯一の解決策」とすることは県外に移設先をはなから求めない国の怠慢にほかならない。
 だが、現時点ではそのような正論が通じる国ではない。知事との面談を避け続ける内閣の姿勢がそれを証明していよう。
 国の理不尽さ、知事の正当性は多くの県民に浸透していよう。一方で、このままでは新基地が造られてしまうとの危機感は強い。
 県はこの間、前知事の埋め立て承認を検証する第三者委員会や関係各課を網羅した辺野古移設問題連絡調整会議を設置した。知事は沖縄防衛局に巨大なコンクリートブロックの設置作業の停止などを指示し、移設阻止に向けて動きだしたものの、事態はなお逼迫(ひっぱく)している。
 実効性のある早急な対応がさらに必要だが、県政運営方針では具体的な言及がなかった。「新基地を造らせない」ため、二の矢、三の矢を放つ時である。
 東村高江で住民生活への被害が確実視されるオスプレイの「配備撤回を求める」とも述べた。そのための対応策も示すべきだった。

「誇りある豊かさ」望む

 15年度は沖縄21世紀ビジョン基本計画の策定から4年目に入る。知事は「沖縄振興の流れを確かなものとするとともに、さらに加速させていくべき重要な年」と位置付けた。
 幾つかの施策では目標達成時期を明示するなど意欲を見せた。
 2021年度までに観光収入1兆円超、入域観光客数1千万人超の達成を掲げたほか、17年度末までの認可保育園待機児童の解消、40年までに平均寿命日本一を取り戻すことを表明した。
 いずれも経済発展、県民生活にとって重要事項であり、実現する必要がある。
 戦後70年事業としては、平和祈念資料館所蔵資料の多言語化や戦争体験証言の記録などを挙げた。沖縄戦の教訓を国内外に発信することを評価したい。
 そのほか、雇用の質の改善や沖縄伝統空手のユネスコ文化遺産への登録、「奄美・琉球」の世界自然遺産登録に向けたやんばる地域の国立公園化、300人規模の高校生や大学生らの国外留学、離島振興、医療充実などの強化も打ち出した。どれを取っても県勢発展に欠かせない重要事項であり、着実な実施を求めたい。
 知事は「『誇りある豊かさ』の実現に確かな道筋をつける年にしたい」とも述べた。県民はその実現を待ち望んでいる。