<社説>不開示求め提訴 知る権利に逆行する愚行


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 県が情報公開条例で開示決定した公文書について、国が決定取り消しを求める訴訟を提起した。文書は米軍北部訓練場や東村などを通る県道70号の共同使用を取り決めたものだ。県道利用の文書をなぜ開示してはいけないのか。

 国が不開示を求めた文書は県の共同使用申請を受け、米側提案の使用条件を那覇防衛施設局長(当時)が県に照会した1981年の通知の一部と米軍、施設局、県の三者間で90年に締結した協定書の2件、英訳文書の計4件だ。
 国が不開示を求める理由は2点だ。文書を「日米合同委員会の議事録の一部」と位置付け、議事録は日米の合意がない限り、公にしないことが前提になっているとしている。米側が不開示を求めていることを挙げ「米国の信頼を損なう」として不開示を求めている。
 日米合同委員会とは日米地位協定の実施に関する日米両政府の協議機関を指し、日本からは外務省北米局長ら、米国からは在日米大使館公使らが参加する。議事録は合同委員会で協議した内容を記したものだ。今回の該当文書は県に照会した通知の一部と県などとの協定書だ。どう考えても日米合同委員会の議事録とは言い難い。
 県は文書が日米合同委員会の議事録ではないと判断し、開示決定を出している。素直に解釈すれば県の判断にこそ妥当性がある。国はこの文書をなぜ議事録の一部と導き出せたのか。ただのこじつけとしか受け取れない。
 防衛省はヘリコプター着陸帯工事に反対する住民らの阻止行動の排除を目的に、県道70号を共同使用から米軍専用区域に変更する手続きを進めるようだ。住民はこうした動きを受けて文書の開示を請求した。提訴に持ち込んだ国の対応は工事反対の動きを封じ、国民の知る権利をいたずらに阻害する悪質な行為と言うほかない。
 国は過去に海上自衛隊那覇基地の対潜水艦作戦センターの建築図面を開示決定した那覇市を相手に不開示を求める訴えを起こした。判決は「秘匿の必要性は認められない」と国の訴えを退けている。今回の訴訟提起はこの裁判と同じ結果になろう。
 在沖米軍基地の提供・使用条件などを定めた日米合同委員会の秘密合意文書「5・15メモ」ですら18年前に全面公開されている。国は情報公開に逆行する愚行をやめ、訴訟を取り下げるべきだ。