<社説>新基地阻止集会 屈しない強固な民意示した


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 豊かな生態系を育む美ら海をつぶす新基地建設は決して許さない。沖縄を組み敷こうとする安倍政権に決して屈しないという強固な意思が重層的に示された。

 米軍普天間飛行場に代わる新基地建設に向けた海底掘削調査が再開されて初めて、名護市辺野古沖への新基地建設阻止を訴える県民集会が名護市瀬嵩の浜で開かれた。
 会場は海上工事が進む大浦湾が目の前に広がる。埋め立て海域を遠巻きにする臨時制限水域を示すフロートが数百メートル沖に浮かび、集会中も抗議するカヌー隊が拘束された。
 工事や調査に影響するとは思えない区域まで囲い込み、県民を排除して恥じない。県内外から駆け付けた約3900人の参加者が、安倍政権の強権性を現地で目に焼き付けた意義は大きい。
 翁長雄志知事の名代として参加した安慶田光男副知事は「知事は近々最大の決意をし、決断すると思う」と明言した。沖縄防衛局に出した岩礁破砕許可の取り消しを強く示唆した発言にひときわ大きな拍手が湧いた。
 翁長県政の取り組みを懸念する声があることも確かだが、集会は「ウマンチュの声を聞く翁長県政だからこそ、(新基地の)歯止めとなる」(呉屋守将・島ぐるみ会議共同代表)ことを再認識する場となった。一人一人の主体的な行動が知事を支え、「自己決定権」を発揮することが新基地をはね返す原動力になることを共有した。
 沖縄の民意と環境保全に背を向けて久しい安倍政権に対し、翁長知事は臆することなく、粛々と対抗策を講じてもらいたい。
 沖縄防衛局は海底掘削調査の期間を3カ月延ばす。政府が7月ごろを目指すとしていた本体工事の着工時期は秋以降にずれ込む。
 昨年8月の工事着手以来、選挙や天候に影響された面はあっても、工事が大幅に遅れているのは、海上とキャンプ・シュワブのゲート前で粘り強く続く非暴力の反対運動の成果である。
 県民の支援も広がり、アイデア豊富な取り組みを展開する若者が存在感を増している。集会で沖縄の不条理を正す決意を表明した20代の4人の若者の感性豊かな発言は参加者の胸を打った。
 理性を失った力ずくの海上作業は、安倍政権の側が追い込まれつつあることと背中合わせである。沖縄の民意は揺るがない。首相は新基地断念に踏み出すべきだ。