<社説>衆院選違憲判決 抜本的な是正策を急げ


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 急場しのぎの数合わせでは済まない。1票の不平等を是正する抜本策を講じるべきだ。

 選挙区ごとの「1票の格差」が最大2・13倍だった2014年12月の衆院選をめぐる訴訟で、福岡高裁は「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態だ」として、初の「違憲」判断を示した。原告が求めた選挙無効の請求は退けたが、「違憲」判断が下された国会の現状を放置してはならない。
 一連の訴訟で福岡高裁那覇支部も「違憲状態」の判断を示した。
 そもそも、衆議院の定数削減と「1票の格差」への取り組みが不十分なまま、解散・総選挙に踏み切ったことが今回の事態を招いたといえる。本来ならば、格差是正の抜本策を整えた上で国民の審判を仰ぐべきだった。国政の怠慢を指摘されて当然である。
 最大格差が2・3倍だった09年の衆院選を「違憲状態」と判断した11年3月の最高裁判決を踏まえ、各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」規定の削除と小選挙区の定数を「0増5減」とする法改正が実施されている。
 しかし、今回の選挙でも格差が残った。「0増5減」の対象外の都道府県で1人別枠方式による定数配分が残っており、格差2倍以上の選挙区が発生した。
 結局はいたちごっこだ。判決は「法改正でも(格差が)解消していない。是正が不十分であることが明らかになった」と断じている。弥縫(びほう)策では憲法が要求する投票価値の平等が保証できないという指摘だと受け止めるべきだ。
 他方、判決が「1人別枠方式」を批判した点は気になる。完全に人口比を反映した区割りでは、県によっては1人の代表もいない事態も懸念される。すると、地方の声が踏みにじられる都市部偏重の「多数の圧政」とならないか。
 格差を是正し、広範な国民の声を反映できる仕組みづくりは至難の業であろう。しかし、「違憲」国会の解消は国民の要求である。一刻の猶予もない。そのことを肝に銘じてほしい。
 現在、格差是正を検討する衆院の有識者調査会は、人口比をより反映した「アダムズ方式」による区割りを検討している。これによると9県で1議席減り、6都県で9議席増える「9増9減」になる。しかし、弥縫策では格差は是正できない。小選挙区制の見直しを含め、あらゆる議論を尽くすべきだ。