<社説>民生・児童委員 県民の積極的支援求めたい


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 地域福祉の最前線で活動する民生・児童委員の県内充足率が全国最下位から抜け出せない状況が続いている。

 県によると、充足率は全国97・1%に対し県内は87・9%(委嘱時の2月1日現在)にとどまっている。民生委員法改正を受けて県が市町村ごとの定数を定めた条例に当てはめると、87・2%(4月1日現在)とさらに低い。
 県は民生・児童委員の活動が知られていないことなどを要因に挙げている。委員は無給のボランティアであり、県内は共働きで生計を立てる世帯が多いことも背景にはあるだろう。
 充足率が全国最下位だからといって、地域福祉が全国より劣っているということではない。だが、充足率の低さは地域福祉を停滞させかねない。委員が不足する地域では1人の委員の受け持ち世帯が増え、きめ細かな活動に支障を来すことが予想される。
 行政には民生・児童委員適任者の掘り起こしによる充足率向上を求めたい。県民も民生・児童委員の果たす役割を十分理解し、積極的に委員を支援、協力してほしい。
 民生・児童委員は生活保護や児童虐待への対応、各種申請書類作成の手伝いなどに当たる。行政や社会福祉協議会など関係機関と連携して地域福祉の向上を目指して活動している。
 困っている人たちにとって最も身近な相談相手であり、地域福祉になくてはならない存在である。
 独居老人の増加などに対応する上で、民生・児童委員の活動は今後ますます重要になる。
 県高齢者居住安定確保計画は、全世帯に占める高齢者単身世帯は2010年の30・4%が35年には36・2%に増加すると見込む。孤独死防止は喫緊の課題である。民生・児童委員が自治会などと連携して「地域見守り隊」を各地で結成していることは心強い。
 民生・児童委員は安心して住み続けることができる地域づくりを活動の柱の一つに据えており、県が掲げる「健康長寿おきなわの復活」の実現に向けても力になる。
 12日の「民生委員・児童委員の日」から「活動強化週間」が始まった。民生・児童委員は生活困窮世帯と行政、地域社会をつなぎ、子どもたちを犯罪から守る取り組みも進めている。その活動に関心を持ち、地域福祉の在り方を共に考える契機にしたい。