<社説>那覇空港トラブル 民間専用化で事故を防げ


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 一歩間違えば大惨事だった。民間機と自衛隊機の共用という那覇空港の弊害があらためて浮き彫りとなった。事故防止の抜本策は民間専用化しかない。

 那覇空港で3日、離陸滑走中の全日空機の前を航空自衛隊のヘリコプターが横切って飛行し、全日空機が離陸を中止した。その直後、日本トランスオーシャン航空(JTA)機が全日空機の後方に着陸した。
 航空機が衝突しかねない重大なトラブルだ。国土交通省によると、管制官は「待機」の指示を出したのに、空自ヘリは離陸していた。一方、管制官はJTA機にも着陸やり直しを指示したが、どの時点で指示が出たのか分かっていない。JTA機長は「指示を受けたのは着地後だった」と説明している。
 事故につながる恐れのある重大インシデントとして運輸安全委員会が調査を始めた。航空評論家の小林宏之氏は管制官と自衛隊機、JTA機のコミュニケーションの失敗、確認不足を指摘する。事実解明を急ぎ、関係機関は一刻も早く再発防止策を講じてほしい。
 今回のトラブルの根底には、那覇空港の過密化と自衛隊との共用という二重の問題がある。
 那覇空港の発着数は羽田、成田、福岡に次ぐ14万8千回(2013年度)である。1本滑走路の空港では福岡空港に次いで多いが、北九州空港や隣県にも空港がある福岡と沖縄を単純には比較できない。那覇空港の過密度は際立っている。1時間当たりの滑走路処理容量は発着数33回で、日中のピーク時は既に処理容量に達している。
 滑走路増設に向けた調査は、2015年までには夏場を中心に航空旅客需要に対応できなくなる可能性を指摘していた。那覇空港の運用は限界に来ているのである。
 過密状態に加え、自衛隊機の混在は那覇空港の安全性を損ねている。1985年には全日空機と自衛隊機の接触事故が起きた。近年では13年に戦闘機のパンクで滑走路が約1時間閉鎖され、2千人余に影響が出た。
 民間機と自衛隊の共用空港は他県にもあるが、発着数は那覇空港を大幅に下回っている。那覇市議会は自衛隊機の重大事故が発生するたびに、民間専用化を求める意見書を可決してきた。
 那覇空港で滑走路の増設が進んでいるが、民間専用化による安全確保の抜本策を講じるべきだ。事故が起きてからでは遅い。