<社説>高校生の飲酒 危険性の高さを知らせたい


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 本島北部の高校生のうち直近1年で飲酒した生徒は26・1%に上ることが、県北部福祉保健所のアンケート調査で分かった。4人に1人が、禁じられている飲酒をしているという事実は無視できない。

 若年飲酒の危険性を周知したい。特に高校生には、将来の芽を摘みかねない点を理解してほしい。
 調査は昨秋実施。北部の高校生2594人から回収した。数の多さから、信頼性は非常に高いとみていい。
 ただ、北部の飲酒率が県内の他地域に比べて際立って高いというわけではないだろう。さらに言えば全国と比べても高いとは限らない。「2007年度お酒とタバコについての全国調査」によると、直近1カ月での飲酒経験は高校の男子女子ともに26・8%だった。北部はほぼ同傾向だとも言える。
 とはいえリスクを軽視してはならない。アルコール依存症は基本的に中高年の病気だが、厚労省のサイトによると、15歳以下から飲み始めた場合、21歳以上から始めたのに比べ、アルコール依存症になる確率は3倍以上に跳ね上がる。初飲年齢と問題飲酒との関係は比例するというデータもある。若年飲酒は脳の萎縮や第二次性徴の遅れのリスクも高める。
 もっと問題なのは事件・事故につながりやすいという点だ。スウェーデンの調査では、18・19歳時点の飲酒量とその後15年間の死亡率は比例する。大部分は暴行によるものだ。若年男性は、低い血中アルコール濃度で交通死亡事故を起こしやすいという報告もある。
 琉球病院精神科の福田貴博医師によれば、沖縄では30代の肝硬変が全国の5倍に上るという。単なる飲酒にとどまらぬ、「有害飲酒」の多さをうかがわせる。県内の20代の自殺率は全国の2倍に達し、その背景にも飲酒年齢の早さが疑われるという。県内の高校生には、こうした「人生を水泡に帰す」危険性を直視させたい。
 若年者の飲酒対策としては飲酒禁止年齢が比較的有効とされる。このため米国は、州によって異なっていた飲酒可能年齢を21歳に引き上げて統一した。その結果、若者の交通死亡事故は減少したという。世界保健機関(WHO)も酒の入手可能年齢の引き上げを提言している。
 国内では成人年齢引き下げに関連して飲酒可能年齢の引き下げも議論されているが、世界の潮流とは逆行する。慎重な議論が必要だ。