<社説>米軍基地化学事故 住民保護の差別許されず

 民間地域と隔絶された軍事基地は有害化学物質を貯蔵している可能性が高い。どの国の政府にも、万が一の事態に備え、周辺住民の生命・財産を守る責務がある。

 何がどのように貯蔵・保管されているかという情報は適切な対応を取る上で不可欠である。住民保護と不離一体の情報提供と避難計画策定をめぐり、日米間の差別的対応が浮かんだ。
 米国は本国内の基地で住民の安全を守るため、化学物資に関する情報を提供し、漏出事故に備えた避難計画作成に参画していた。
 特定の有害化学物質を保有する企業や自治体などでつくる委員会設置を義務付けた「緊急対処計画および地域住民の知る権利法」に基づく措置だ。ハワイ、カリフォルニアの両州では、米軍が参加して避難計画が策定されている。
 一方、在日基地では地元自治体に情報を開示していない。米国の自国民は手厚く守り、日本、沖縄の基地周辺住民は軽視する。それを認める日本政府の弱腰対応の末に、命の重さをめぐる露骨な二重基準が温存されている構図だ。
 人権を重視する国と標榜(ひょうぼう)するのならば、米国は即刻是正すべきだ。
 在日米軍基地の73・8%が集中する沖縄の基地はとりわけ、漏出事故などの危険性が高いはずだ。過去にも有害物質が基地外に流れ出るなどし、河川や土壌を汚染する事例が繰り返されてきた。
 だが、過去の有害物質管理の履歴はほとんどなく、現在の基地運用の情報ももたらされない。無い無い尽くしのまま、危険がどこに潜んでいるかが把握できないのだ。
 1986年にPCB(ポリ塩化ビフェニール)入りの変圧器油が嘉手納基地内の土壌を汚染していたことは記憶に新しい。8月に起きた神奈川県の相模総合補給廠(しょう)の倉庫火災で燃え盛る物質の特定に手間取り、周辺住民を不安に陥れたばかりだ。
 基地内で有害化学物質による事故が起きた場合、生死に関わる事態になりかねない。だが、どんな物質がどう扱われているかを県民は知るすべがない。米軍に与えられた排他的管理権が立ちはだかり、打つ手がないのが実情だ。米軍基地所在の全21市町村で避難規定が未策定になっている大きな要因である。
 基地で起きる非常事態から住民を守る当然の備えを固めるため、県や基地所在自治体は差別的対応を断つ働き掛けを強めてほしい。