07参院選 「良識の府」を取り戻せ

 年金問題を最大の争点とした第21回参院選は、29日投開票が行われ、年金問題を追い風にした民主党が躍進し議席を大きく伸ばしたのに対し、自民党は改選議席を大幅に減らし惨敗した。
 与野党が一騎打ちの激しい戦いを繰り広げた沖縄選挙区は、無所属で野党各党から推薦を受けた元職の糸数慶子氏が、自民公認で公明推薦の前職・西銘順志郎氏を破り当選した。
 与党は自民、公明両党の非改選議席を合わせて過半数を割り込んだ。安倍晋三首相は、昨年9月の就任以来、初めて臨んだ全国規模の国政選挙で国民から極めて厳しい審判を下された。
 一方、民主党は参院の第一党に躍り出た。小沢一郎代表が描く次期衆院選での政権交代の道筋が現実味を帯びてきたと言えよう。

自ら招いた逆風

 参院選の結果は、衆院選とは違い、政権選択に直接結び付くものではない。とはいうものの、安倍政権にとっては、今回の選挙結果は不信任を突き付けられたも同然である。
 各種世論調査で与党の劣勢が伝えられた以後、自民党執行部は首相の責任問題の火消しに躍起になってきた。首相自身、続投を表明している。だが今後、進退問題に発展する可能性も否定できない。
 有権者はなぜ民主党に多くの議席を与えたのか。
 重要法案を強調する割には、与党の国民への説明は不十分で、国会では与野党の論議が深まらないまま、対立法案を強引に採決にかける姿勢が目立った。先の通常国会の会期末で乱発した強行採決が好例である。
 衆院で議席の3分の2を占める巨大与党を背景に「数の論理」で押し切る政治手法を推し進め、与野党の合意が軽視される。こうした「安倍政治」への異議申し立てでもある。猛省を促していると受け止めるべきだ。
 国民は、首相が掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」に対しても、もっと丁寧な説明を求めているのではないか。国の行方や国民の暮らしを左右する重要法案に対して、慎重に論議を尽くすことを政治に強く期待しているはずだ。首相をはじめ、政府与党は国民の期待や願いには耳を傾け、常に謙虚であるべきだ。今後の国のかじ取りに生かす必要がある。
 与党を惨敗に追い込んだのは言うまでもなく、年金問題を中心に吹き荒れた「逆風」にある。しかし逆風は、決して自然発生的に起きたのではない。その源は、政府与党に発しているのだ。自らまいた種である。

示せるか存在意義

 年金問題だけではない。原爆投下について「しょうがない」と公示直前に発言し辞任した久間章生前防衛相の失言もしかり、説明責任を果たさない赤城徳彦農相の事務所費問題もしかりである。
 首相はこれらの問題に指導力を発揮できなかったばかりか、逆にかばい続けた。国民の怒りを買い、不信が広がり、不安をもたらしたのは当然だ。
 発足から10カ月。この間の「安倍政治」は、沖縄選挙区の行方にも影を落とした。
 米軍普天間飛行場の移設問題では、十分な説明もなく、名護市辺野古海域の環境現況調査(事前調査)で海上自衛隊が投入された。
 文部科学省の歴史教科書の検定では、沖縄戦の「集団自決」をめぐる軍の関与に関する記述が削除・修正された。県民の総意である検定の撤回と記述の復活要求は一顧だにされない。
 いずれも県民にとってはゆるがせにできない重大な事柄だ。新たな基地を造らせないことなどを軸に「平和の1議席」を訴え、平和な暮らしをアピールした糸数氏の勝因にもつながっている。
 自民党の記録的ともいえる大敗で選挙は幕を閉じた。だが年金制度の抜本的な制度の設計、政治とカネの問題など選挙戦で争点になったさまざな問題は片付いていない。国民の立場に立った制度の在り方をめぐる議論などは、むしろこれからだ。3年後には与党による憲法改正の発議も予想される。
 今の参院は、「良識の府」と呼ぶには懸け離れすぎている。党利党略が優先され、衆院の議決をなぞって追認するだけでは参院の機能は果たせない。今回の結果で参院での論議に緊張が戻ってくることを期待したい。参院の存在意義を示してほしい