会場使用拒否 ホテルは社会的責任自覚を

 企業の社会的責任の自覚を、限りなく疑わせるものだ。理不尽な暴力に屈した末の判断であるならば、この国は果たして法治国家としての資格を備えているのか。そんな批判も、一概に的外れとも言えまい。
 日教組(森越康雄委員長)が予定していた教育研究全国集会の全体集会を、会場となっていたグランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)が、一方的に使用を断ってきた。右翼団体による妨害行為などを理由にしている。
 教研集会は学力、指導方法、いじめなどの問題について、全国の教職員が研究、話し合いをする場だ。1951年以降、毎年1回の全国集会を実施しているが、全体集会が中止に追い込まれたのは初めて。これまでも、集会のたびに右翼団体の街宣車が会場周辺をマイクでがなりたてるなど、妨害行為を繰り返している。
 今回の教研集会は2日から4日までの日程で、全国から延べ1万2000人の参加、全体集会には約3000人が出席の予定だった。
 昨年5月、日教組はホテルと会場の使用契約を交わした。ところが11月になって、右翼団体による妨害の可能性などを理由に、ホテル側が一方的に契約破棄を通告してきた。日教組の申し立てに基づき、今年1月には東京地裁が会場使用を認める仮処分を決定、さらに東京高裁もホテル側の抗告を棄却していた。
 裁判所が結論を出した後も、ホテル側はかたくなに使用を拒み続けていた。集会を開けば右翼の妨害で客や周囲に迷惑を掛ける、というのが言い分だ。また、右翼の妨害行為などについて、契約の前に日教組から説明がなかった、とも主張している。
 これに対する東京地裁の認定はこうだ。日教組は前回の集会に関して、街宣車が来て警察が警備した、とホテル側に述べており、説明責任は果たしている、とする。
 集会中止を発表した森越委員長は「司法の判断に従うのは法治国家の基本。ホテルの姿勢は自由や民主主義を壊滅させるもの」と批判したが、当然の認識だろう。
 直接、右翼などの脅迫があったのだろうか。ホテル側の態度を見ると、こう疑われても仕方ない。
 集会の自由・表現の自由は憲法の認める、最も大切な基本的人権の1つだ。今回のホテル側の態度は、こうした権利をも奪うものと批判されかねない。
 企業の社会的責任とは何か。いま一度、思い起こすべきだ。理不尽な行為に対してはむしろ批判の声を上げ、さらに日教組や警察と一体となって対策を練り、集会の進行に万全を期す。こうした毅然(きぜん)とした態度こそが、求められているのではないか。不法者を喜ばすような愚だけは、避けるべきだ。