岩国市長選 問われる「アメとムチ」政策

 米軍基地を抱える山口県岩国市の出直し市長選が告示された。米軍厚木基地(神奈川県)の米空母艦載機部隊を受け入れるかどうかが最大の争点である。
 米軍再編に伴い政府から新たな基地の負担を迫られ、民意に基づいて反対を貫こうとすると「アメとムチ」の政策が容赦なく降り掛かってくる。結果、受け入れの是非をめぐり地域や市民が真っ二つに分断され翻弄(ほんろう)される。
 わたしたちが過去に幾度か直面させられ、「苦渋の選択」を強いられたあの構図である。無関心ではいられない。
 選挙は、移転容認派が多数派を握る議会との対立から、民意を問うため任期途中で市長の職を辞した井原勝介氏と、移転賛成の立場から立候補した前自民党衆院議員の福田良彦氏による一騎打ちの争いである。
 艦載機の岩国への移転は、2005年秋の米軍再編の中間報告で明らかになった。これに対し、当時市長だった井原氏は受け入れを拒否。翌年3月に実施された住民投票では「反対」が約9割を占め、その直後の市長選では井原氏が容認派候補らに圧勝した。これだけでも、民意の所在がどこにあるかは明らかだ。なのに同じテーマを短期間に、なぜ3度も問わねばならないのか。
 理由は、米軍再編推進法に基づく交付金を盾に、要求を一方的に押し付けようとする政府の手荒な手法にある。
 既に建設に着手していた市庁舎の建て替えに対し、政府は、受け入れない限り補助金35億円は凍結すると、強権的な姿勢をむき出しにしてきた。「アメとムチ」のこの強引さは、政府が昨年、北部振興費を凍結した際に見せたのとまったく同一だ。
 政府に異議を申し立てるや、露骨な「兵糧攻め」に出る。地域の声を無視したこうした理不尽なやり方は、問題をこじらせ、政府への不信、ひいては防衛政策への不信を増幅するだけだ。
 今選挙では「最新の民意」と同時に、政府の姿勢や政策に対し市民の審判が下される。