チベット暴動 強硬路線は対立深めるだけ

 中国チベット自治区ラサで大規模暴動が起き、多数の犠牲者が出た。警察部隊はチベット人のデモ参加者に対し、発砲するなど武力鎮圧に踏み切っており、1989年のラサ暴動以来の痛ましい事態となった。
 過度のデモ鎮圧は、暴動を誘発し、あおるようなもので、事態の沈静化につながらない。むしろ対立と混迷の度を深め、犠牲者が増えるだけだろう。
 中国政府はデモ隊への武力行使を厳に慎むべきだ。国際社会の信頼を得て、8月の北京五輪を成功に導きたいと考えるなら、チベットへの強硬路線に終止符を打ち、対話路線へと転換する確固たる姿勢が求められる。
 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と中国政府の対話は、79年から94年まで続いた。その後、中断し、2004年に再開されたが、目立った成果を挙げていない。
 背景には胡錦濤国家主席がチベット自治区のトップだった時代にラサ暴動を武力鎮圧し、■小平氏らに気に入られ、中央に引き上げられたという経緯がある。
 しかし、こうした強硬姿勢が通用する時代でもない。今回は国際人権団体が「国際的な人権基準の侵害だ」と中国政府を批判。欧米各国も胡政権に自制を求め、デモ参加者らの身柄拘束を解除するよう求める声明などを出した。
 残念ながら、胡政権は強硬姿勢を崩していない。逆にダライ・ラマの関与を指摘し「(暴動は)ダライ集団が入念に画策した」と強く非難している。
 ダライ・ラマは非暴力を貫く活動が認められ、ノーベル平和賞を受賞した人である。本人も否定しているように、暴動を画策したとは考えにくい。それにチベットの僧侶は、基本的に抗議のデモ行進はしても、暴力に訴えることはしない。今回は警察部隊がデモ参加者を多数拘束し、これに抗議したデモ隊側が政府批判を爆発させたという見方が支配的だ。
 ただ、一部の参加者が略奪に走り、漢民族の商店主らを襲撃したとの報告もある。事実なら、チベットの非暴力精神に背く行為といえ、深く反省せねばなるまい。
 いずれにしても、双方が対立を深めてはチベット問題の解決は遠のく。五輪を控え「和諧社会(調和の取れた社会)」実現を国内外にアピールしてきた胡指導部にとっても、「高度な自治」を求めるダライ・ラマ側にとっても得策ではあるまい。
 北京で先ごろ記者会見したチベット民族の代表は、チベット自治区と青海省を結ぶ「青蔵鉄道」の完成を喜んでいた。この鉄道にチベットの人々を乗せ、五輪会場を案内するくらいの度量と取り組みが中国政府にはほしい。

※注:■は「登」にオオザト