郵政法案否決・小泉政権に大きな痛手/政局の行方は有権者の手に

 小泉政権の最重要課題の郵政民営化関連法案は8日午後の参院本会議で、自民党から多数の造反者が出て、賛成108票、反対125票で否決された。この結果を受け、小泉純一郎首相は「内閣不信任に相当する」として、衆院の解散・総選挙に踏み切った。
 小泉首相は、同法案を「改革の本丸」と位置づけてきただけに、大きな痛手を受けることになったのは間違いない。
 衆院で可決されたにもかかわらず、参院で否決されたことを理由に衆院を解散するのは、筋違いであるとの批判があるのも確かだ。
 しかし、決着は有権者の手に委ねられることになった。
 有権者が、郵政民営化、さらにこの間の小泉政治をどう判断するか。一票が政治を動かすことになる。

小泉流政治に反発

 郵政民営化は小泉首相の悲願だった。自民党内には当初から強い反発の声もあったものの、強引に民営化へ向けた動きを推し進めてきた。昨年9月に党の了承も得ず、郵政民営化へ向けた基本方針を閣議で決定。党の意思決定機関である総務会も慣例無視の多数決で押し通してきた。
 その中、反対派の結束は逆に強まり、衆院ではわずか「5票差」で可決された。
 参院では衆院より、与野党の勢力比が拮抗(きっこう)しているため、自民党の執行部は反対派の切り崩しに躍起となったが、党内から造反者が続出。17票差で法案は否決された。
 その間、小泉首相は「否決は内閣不信任」「反対は倒閣運動」と解散権を盾に、反対派をけん制。党執行部は「解散になれば自民党は野党に転落する」などと説得したが、逆に反対派の結束を強める結果となってしまった。
 郵政民営化の是非以上に、小泉首相の党内手続きを軽視した政治手法に反発があった、といえる。
 小泉首相は参院での法案否決を受け、解散・総選挙に打って出た。果たして参院での法案否決を理由に衆院を解散できるのかとの疑問があるが、憲法学者の間では「法的に問題ない」との見解が多数である。
 確かに、衆院の解散権は首相に与えられた専決事項とはいえ、今回の解散に大義名分があるかといえば疑問が残る。それは参院の法案否決による衆院解散という憲政史上に例をみない事態だからである。
 それと同時に解散権行使の矛先が当初から野党ではなく、自民党内の反対派に向いていたからだ。自民党の内紛が解散という事態を招いてしまった、という側面は否めず、いずれにしても憲政史上、異例の解散・総選挙と言わざるを得ない。

政権交代の可能性も

 「解散権の乱用ではないか」との疑問も残るが、小泉首相は反対する閣僚を罷免してまで強引に解散に踏み切った。このような小泉流の政治手法の在り方を有権者がどう判断するかも、今回の選挙の焦点の一つである。
 ところで、自民党内にあった解散・総選挙反対論は「解散に踏み切れば、自民党は分裂選挙になり、野党が有利になる」というのが主な理由だ。その理屈で党執行部は党内の反対派の締め付けにも当たってきた。
 党内の事情を解散・総選挙の反対理由に挙げるのは、どう考えてもおかしいし、首相のこの間の言動、流れからいっても、国民に信を問うのは当然の帰結ともいえる。
 各種世論調査でも解散支持が多いのもうなずけるし、解散の在り方に疑問は残るものの、有権者にとっては絶好の機会を与えられたといってもいいだろう。
 小泉首相は「郵政民営化ができないなら、自民党をぶっ壊す」と公言してはばからなかった。果たして、衆院の解散・総選挙によって、自民党はどうなるのか。
 今回の選挙は、政権交代の可能性さえある、重大な選挙だ。選挙では、郵政民営化の問題は当然のこととして、首相の靖国神社参拝で招いた日中、日韓関係の悪化をはじめ小泉外交の評価、年金を中心にした社会保障制度改革と税制の在り方などが争点となる。県内では米軍再編に絡んだ普天間飛行場の移設問題も争点だ。
 政局の行方は、有権者の手に委ねられた。一人一人がそのことを自覚し、慎重に政策を判断し、投票で行動を示すべきである。