<南風>「九つの特質」の思い出


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 「愛、喜び、平和、辛抱強さに親切、善良、信仰、温和、自制、霊の実あわせて九つよ」。幼い頃、母と口ずさんだ懐かしい歌です。「霊の実」とは聖書の中の言葉で、敬虔(けいけん)なクリスチャンである母は、私に「この九つの特質を持って生きなさい」と口酸っぱく説いたものです。小さい子でも覚えられるように、童謡「どんぐりころころ」のメロディーで歌いました。

 現在の私は母と信仰を共にすることはなく、特定の宗教に対する確固たる信仰心はありません。そういった意味で「信仰」という霊の実を培うことはできませんでしたが、何かしら人間の力の及ばないものがあるということは謙虚に認め、畏怖の念を抱くようにしています。
 天職と信じているアナウンサーの仕事、その仕事を深めるために取得した産業カウンセラー、趣味、そして生き方のことなど。いろいろと思いを巡らせ、この半年間キーボードを叩(たた)きました。今回、パソコンを前にして真っ先に思い浮かんだのが「愛から始まる九つの特質」だったことに、私の生き方の根幹を支える人生哲学なのだろうなとあらためて感じています。
 20代では理解できなかった母の想いが、アラフォーを迎えた私の心に少しずつ染み渡っているのかもしれません。「どんぐりころころ」で覚えた特質を口ずさむことが多くなりました。来年は沖縄が、日本が、世界が豊かな平和に包まれ、万人が心穏やかに過ごせる1年であってほしい。そのヒントがこの九つの特質にある気がしてなりません。
 この半年間あちらこちらで、「読みました」と声をかけていただきました。コラムをきっかけに、朝の番組を聴くようになったというお葉書や、参考になったという投書にとても励まされました。また、ラジオでお会いましょう。良い年をお迎えください。
(大城勝太、エフエム沖縄アナウンサー)