<南風>チャレンジド


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 実家の押し入れから懐かしいカセットテープが“出土”した。幼い私が絵本を読んでいる。たどたどしい声をリードするのは、両親だ。読めない文字の前で無音が続く。しびれを切らして登場する父や母。今でこそ、一人で大きくなったような顔で過ごしているが、家族や友人、多くの方々に助けられて今の私がいることをあらためて痛感する。

 そのテープの中で、偉人伝「ヘレンケラー」を朗読する様子も録られていた。目と耳が不自由なヘレンケラーは、サリバン先生のサポートのもと、言葉を覚え、自身を表現する喜びを獲得した。目と耳が不自由な盲ろう者の方は増加の傾向にある。全国盲ろう者協会によると、全国で1万4千人、沖縄は209人と推計されており、情報のバリアーのために孤立を余儀なくされている人も多い。

 音と光のない世界で、手書き文字や触手話、指点字などを通じてコミュニケーションを図る。取材を通じて出会った宮里進さんは、先天性の病で光を失い、難聴が進行する中にあって、現在も鍼灸(しんきゅう)あん摩マッサージ指圧師として治療院を営んでいる。2人の子供を育て上げ、認知症の母親を介護しながら社会福祉向上のために尽力されている。

 宮里さんからうれしい便りが届いた。第7回全国盲ろう者体験文コンクールで入賞したとの知らせに思わずバンザイした。全国18編から宮里さんら3人が受賞し、沖縄からは初受賞だ。

 宮里さんの作文を拝読する中で印象深かった箇所を引用する。「米国では、障害者のことをハンディキャップとは呼ばないそうだ、チャレンジドと呼ぶそうだ。日本語に解釈すれば、特別に資格を与えられたとの事らしい」。宮里さんの生きざまは、周囲に希望と光をもたらす。もうすぐ始まるリオ・パラリンピックでは、多くのチャレンジドに心からの声援を送りたい。
(金城奈々絵、ラジオ沖縄アナウンサー)