<南風>沖縄の地位高めるMRO事業


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 2018年から那覇空港を拠点としてMRO事業が開始される。MROとは航空機整備事業を意味する英語の略である。事業者はANAグループが那覇市に新しく設立した「MRO ジャパン」。伊丹空港のドック拠点を那覇空港に移転させる計画で、県が格納庫を整備次第、事業を開始する。

 対象機種は各航空会社の中・小型ジェット機と三菱航空機のMRJが中心になる。顧客はANAグループ、格安航空会社(LCC)を含む国内外の航空会社のほか、アジアの航空会社も対象に入る。MRJはわが国初のジェット旅客機で、日本航空機産業隆盛のカギを握ると言われており、MRJのアジアにおける推奨整備工場にMROジャパンが選定された。

 では、なぜこの事業の拠点が沖縄なのか。それには確固とした理由がある。沖縄は東アジアの中心で地の利があり、国内第2の路線数を持つ海外路線が急増しており、理工系の人材が安定的に確保できることである。現在の航空貨物ハブ事業に加え、今回のMRO事業の始動は、沖縄の地位をさらに高めることになろう。ANAは沖縄の可能性に賭けている。

 MROジャパンは昨年、県出身者19人を採用し、既に航空機整備士となるための訓練を始めている。採用内訳は琉球大学、沖縄高等工業専門学校、工業高校、本土航空専門学校であるが、人材確保のため、産学連携での人材育成も進めている。沖縄高専では昨年、航空コースを設置した。今後は県出身者を年間20~25人採用し、最終的に400人程の陣容にする計画だ。

 これで、県内の理工系学生の受け皿が増える。さらに、将来は航空機整備産業人材養成センター設立の可能性もある。夢が広がる計画だ。理工系学生の諸君、沖縄で世界に通じる航空機エンジニアへの道にチャレンジしてみませんか。
(桑江修、沖縄県工業連合会専務理事)