<南風>私がちゃんと沖縄やってるからね


社会
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 備瀬の福木並木など、福木は沖縄らしさを演出するにくいやつである。小さな白い花(五弁花)は可憐(かれん)で香ばしい花吹雪を散らし、コウモリの餌から染料(樹皮から黄色の染料が採れる)に連なる多様性、さらにその葉は厚い革質で潮風に強いことから、屋敷林(暴風・防火林)として重宝されてきた。

 ところで、オトギリソウ科の福木の出自は沖縄ではなく、フィリピンやインド辺りが原産地だ。中山伝信録にもその記述があり、西原の内間御殿も福木で囲まれていたので、約300年ほど前に沖縄へ移植された大交易時代の輝かしい成果の一つなのだろう。

 むしろ沖縄らしさを代表する樹木は、案外に沖縄産が少ないのである。例えば、マメ科に属する相思樹(そうしじゅ)。これは明治39(1906)年に動植物学の泰斗黒岩恒(ひさし)の尽力で台湾から導入された。現地では軽便鉄道の枕木に利用したのだが、沖縄への導入は緑肥のためだ。畑いじりの方はご存じかと思うが、相思樹の落ち葉を畑にすくと、土壌が実にふっくらとして絶妙な肥料になるのである。

 まだある。木麻黄(もくまおう)もオーストラリア原産で明治41(1908)年に台湾から種子で導入された。その2年後に導入されたのがクロトンで、東インドやマレーシアが彼の故郷である。

 島唄の屋慶名クファデーサーで有名な古葉手樹(コバテイシ、和名はモモタマナ)も原産地はアジア・アフリカ一帯の海岸沿いなので、島ナイチャーみたいな樹木かもしれない。

 だが、沖縄原産にこだわる必要はさらさらない。「私がちゃんと沖縄やっているからね」と福木などが沖縄らしさを演出してくれるおかげで、われわれはトゥルバッて(ボーっとして)亜熱帯の倦怠(けんたい)を楽しんでいられるのだ。しかるに福木や相思樹、クロトンはまことに偉いのである。
(渡具知辰彦、県交通安全協会連合会専務理事)