<南風>サンキュウ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 人は人から産まれ、人に育てられます。

 私も母から産まれ、幼い頃にどれだけ母を困らせたか分かりません…。

 人は誰しもが人から産まれ、人に迷惑をかけながら、それでも人に育てられます。そんな当たり前のことを、今回はもう一度考え直してみたいのです。

 「産休」

 この言葉に私は、いつも違和感を覚えています。たしかに、職場には出てこなくなるかもしれませんが、妊娠した人は、仕事とはまた違う大変な日々を過ごします。

 「育休」もそうです。もちろん子どもはかわいいですが、親のペースはお構いなしで、泣いたり散らかしたりする子どもを育てる状況は、とても「休」ではないと思います。

 私たち一人一人が経験した、命の誕生と成長の過程なのに、仕事をしている大人の目線で「休」の字を向けるのは、たとえ職場で使う用語とはいえ、少し悲しい気がするのです。

 とはいえ、ここで私がすてきなネーミングを考えても、おそらくしばらくは「産休」という言葉は使われ続けるでしょう。

 そうであれば、これから新たな命を産み、育てる人に、産まれくる命に、そして自分自身を育ててくれた人に、感謝の気持ちを込めて、「サンキュウ」という言葉を口にしたいと思うのです。

 実は当事務所にも、近く「産休」に入る方がいます。彼女はとても優秀で、一時的にでも職場から抜けるのは痛手なのですが、まずは私から、感謝の気持ちを込めて彼女に「サンキュウ」を届けたいと思います。

 人は人から産まれ育つ。

 誰もが通ったその道を、皆で温かく迎えることができる社会でありたいと思うのは、出産も育児も経験したことがない、若者の理想にすぎないのでしょうか。
(白充、弁護士)