<南風>空手道が教育にもたらす役割


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 空手は、沖縄古来の武術「手(ティー)」と、14世紀以降、交流が深かった中国拳法や2度の禁武政策などの時代の影響も強く受けながら、先達のたゆまぬ努力と研さんにより沖縄独自の武術として発展した。世界192の国・地域に1億人の愛好者がいるといわれ、2020東京五輪種目に採用されるまでになった。

 2012年度から中学校体育において武道が必修化され、空手道は県内の中学校で8割、高校で6割強の学校で取り組まれている。県教育庁が沖縄発祥の空手道を独自の大切な伝統文化と位置付け、学校教育に取り入れるべく、三十数年前から指導資料作成や講習会を実施してきた成果だ。

 昨年から県教育庁保健体育課がリードし、空手道指導書研究・作成委員会が結成され、学習指導要領にのっとった(沖縄県版)『学校体育における空手道指導書』教材用DVDを作成している。3月には県内各学校に発送される予定だ。

 活用目的は空手道を継承・発展させるため、積極的に教科体育や学校行事などに取り入れて歴史や特性を理解させるとともに、技能習得を通して、本県の明日を担う児童生徒の心身の健全育成を図ることにある。

 東京五輪や南九州全国総体を控え、県外のみならず海外から沖縄を訪れる人がさらに増えることは間違いないだろう。沖縄の風土・文化に触れる絶好の機会としたい。イチャリバチョーデーの心で県外、海外の方々を迎えることがウチナーンチュの役割である。先人たちは、大航海時代に万国津梁(しんりょう)の民として東アジアの国々と交易し、多様な文化を取り入れ沖縄独特の歴史・文化を育んできた。

 われわれ教員は、学校体育における空手道の指導を「架け橋」として、「空手に先手なし」の精神を持った児童生徒を育成し、県内外のみならず、アジア・世界へ輩出していきたい。

(田村正人 県空手道連盟強化委員長、県立前原高校教諭)