<南風>総力挙げて挑むマラソン中継


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 明日はおきなわマラソン! ランナーの皆さんのご健闘を祈っています。

 沖縄テレビは毎年、42・195キロで生まれるさまざまなドラマを生中継でお伝えしている。クリアな映像と音声を届けるため、技術マンたちは1カ月かけてシステムを構築し、約100人のスタッフが総力挙げて挑んでいる。

 10年前、私は、初めて移動中継車のリポートを担当した。安全のためヘルメットをかぶり、車の屋根の上に陣取る。そこは、トップランナーの軽快な足音まで聞こえてくる特等席だ。ただ、次々に入れ替わる先頭集団の順位、それに選手の表情や足の運びの変化をつぶさに伝えなければならない重要なポジション。寒さと緊張で固まっていたヘルメット姿の私は、きっと、宮古島まもる君のようだったに違いない。

 そんな緊張が吹き飛んだのは、30キロを過ぎた地点。悲願の初優勝に向け、独走態勢に入っていた県勢ベテランの末松隆二選手の表情が急にゆがんだ。とっさに私は、握っていたマイクをオンにして状況を伝えた。

 「アクシデント、アクシデントです。末松選手、苦しい表情、手で太ももを押さえました」。コメントに合わせ、ランナーの横を走るバイクのカメラマンがその様子を捉える。続いて、沿道からの声援を音声マンが拾う。その声援を力に、いったんは止まりかけた末松選手の足が前へ―。脅威の粘りを見せた末松選手は見事、初優勝を飾ったのだった。

 目の前で起きたことを伝えるだけで精一杯な拙い私のリポートだったが、臨場感あふれる映像と音声のおかげで、レースの面白さを伝えられたと思っている。中継の後、スタッフと交わした固い握手を私は今でも忘れることができない。

 今年も沖縄テレビでは、チームプレーで感動のドラマをお届けする。ぜひ、ご覧ください!
(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)