<南風>別り寒さに思う友


社会
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 別(わか)り寒(びぃー)さとなるこの季節、天国へ旅立った友のことを思い出す。友は、人々がふいにみせる喜びや悲しみの表情を逃さない名カメラマンだった。志を同じくし、ドキュメンタリーを制作していた6年前のこの季節、友は仕事中に倒れた。くも膜下出血だった。

 私たちの会社は市街地にある。だから119番通報をしてすぐに救急車が駆け付け、病院に運ばれるまでの時間は30分程度。それでもその時間が果てしなく長く感じられた。

 友と私は、その時間を1分でも1秒でも縮めようと市民からカンパを集め過疎地で救急ヘリ(MESH)を飛ばす医師たちを追っていた。取材の中で、同じく、くも膜下出血を発症したものの、13分後にはヘリで医師が駆け付け、命をつないだ女性の症例を見てきた。救急車での搬送ならば50分を費やす場所だった。あらためて知る1分1秒の大切さ。

 社会の高齢化、医療の高度化に伴い、航空医療の有用性が増していることを伝えるため、私たちは先進地へ飛んだ。スイスでは、市街地でも山岳地でも15分以内でヘリが飛んで来る体制を民間が築き、北海道では公費で運営するドクターヘリ4機、急患の搬送等も担う消防ヘリ3機に加え、ドクタージェットの試験運行が開始されていた。

 それに比べ、島しょ県・沖縄では公的なドクターヘリ1機だけという現実…。

 報道を重ねても変わらぬ現実を前に無力感にさいなまれていた時、友が言った―。「多くの戦闘機が飛び交う沖縄の空に、もっと県民の命を救う航空機が飛んでほしいね」

 友よ、あなたが今いる空に命を救う航空機が飛び交う日が来るように見守っていてくださいね。

 追伸、県が消防ヘリ導入の検討を始めたそうです。

 春風が待ち遠しいですね。合掌。
(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)