<南風>国際ゆいまーる


社会
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 私にはケニアの首都ナイロビから175キロ離れた村に住む息子がいる。19歳のジョアナだ。二十余年前、社会人になって始めた発展途上国への教育支援は、国際的非営利団体を通じて毎月「チャイルド」とよばれる児童に対して寄付が渡る仕組みで、一部は地域に井戸を掘る、学校のトイレを修復するなどの活動に充てられる。これまで南米、アフリカ、中東と、国籍も性別も年齢も異なる4人の「ペアレント」となった。

 ジョアナは7人兄弟の末っ子で数学が得意。現地からの活動報告とともに届く自筆の手紙と写真を見て、11年間にわたり彼の成長に寄り添った。彼らチャイルドのおかげで世界への関心が深まった。

 人は生まれた場所が違うだけで衣食住や基本的人権が保障されない。幼い頃を南アフリカで過ごし、帰国後に歴史の授業でアパルトヘイト(人種隔離政策)について学んだ時にそのことに気付いた。同国の大きな貿易相手だった日本人は、白人同等の待遇を受けた。わが家にも家族を故郷に残し、単身住み込みで働いていた黒人の人たちがいた。

 自分は生かされている。だから恩返しをしたいという思いは、この支援団体での翻訳ボランティアや、複数の国連機関などへの寄付へと拡大していった。「国際ゆいまーる」と称しては言い過ぎか。さまざまな理由から寄付文化が根付かないと言われる日本だが、使途と成果をきちんと情報開示している団体も多くあり、寄付金控除も可能だ。ペアレントの中には職場仲間で毎月100円ずつ出し合っているグループもある。日本人にとってはごく平均的な外食代と同等額だ。

 春を迎え、多くの若者が新たな門出を迎える。彼らには自分のゆいまーる目的を見つけて社会貢献してほしい。そして大人の私たちも積極的に恩返しができる社会にしたい。
(名取薫、沖縄科学技術大学院大学広報メディアセクションリーダー)