<南風>仕事が人を育てる


社会
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 夏のある日、1枚のハガキが届きました。差出人は大型台風の被害を心配した兼高かおる氏。そこには「私にできることがあったら、何でも言ってくださいね」と書いてありました。

 エコツーリズム国際大会の疲れから半年余り休業していた私は、知念村から指名された企画コンペに出るかどうか迷っていました。不思議なことにその前日には、大学時代に久高島(知念村)撮影のお手伝いをした民俗映像監督の北村皆雄氏から、「沖縄大学のシンポジウムで久高の話をするからおいでよ」とお誘いを受けたばかりでした。

 2日連続の予期せぬメッセージは「仕事をしろ」との合図に思われました。決めたら猪突(ちょとつ)猛進の亥(い)年生まれです。仲間とブレーンストーミングを重ねて一気に企画書を書き、初年の2005年度は知念村、2年目は合併後の南城市から「沖縄・日本のルーツが見える心のふるさと整備事業(体験滞在交流促進事業)」を受託しました。まだ斎場御嶽(せーふぁうたき)へ行く観光客もそう多くない時代でした。

 こうして、当時、知念村議会議長だった故・屋比久清正委員長の下、意欲的な委員に支えられ、わが社のノウハウや全国に広がる人脈を総動員した「南城ツーリズム」が産声をあげました。同事業で造った「がんじゅう駅・南城」「緑の館・セーファ」「海の館・イノー」は、同市の拠点施設としてにぎわっています。セミナーや会議で激論し合い、モニターツアーの企画運営に苦戦した当時の受講生は、南城市の観光や商工を率いるリーダーになっておられます。

 わが社の主担当だった松原健氏がまとめた事業報告書は後輩のバイブル的役割を果たし、その後常務になった平井雅氏は独立して、日本ファシリテーション協会会長として活躍しています。

 『仕事が人を育てる』。つくづく実感します。
(開(比嘉)梨香、カルティベイト社長 沖縄海邦銀行社外取締役 元沖縄県教育委員長)