<南風>少子化対策考


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 やんばるの豊かな自然に囲まれた本学(OIST)のキャンパスで、ひときわ賑(にぎ)やかな場所が、教職員・学生の子どもたちが通う学内保育園「てだこ」だ。生後2カ月の乳児から就学前の6歳児まで、計9クラス、136人が1日の約半分をここで過ごす。

 2013年1月のてだこ設立以来、OISTの成長と国際性を反映して、児童数は36人から136人に増え、その出身地も24と多岐にわたる。保育士も日本人を中心に、英国、米国、ベネズエラ、エジプト、インド出身とさまざまだ。てだこは、OISTが優秀な人材を内外から採用し、引き留めることに一役買っている。園長を務める同僚は、働く親が抱えるストレスを少しでも軽減し、質の高い保育を提供することは、個人の生産性を高めることにもつながると話す。

 夫婦共働きの国内大手IT関連企業の男性社長が、子どもが生まれたことをきっかけに社内保育園を作ったところ、2年経(た)ってベビーブームが起きていたという。また、世界的に有名な日本のアニメ制作会社でも、かつて同じ経験をしたらしい。これらは、事業主が従業員に対し、子どもを産み、育てることを支援する姿勢を示すことが、少子化対策として効果的であることの証しだ。

 現在の日本は、認可保育所に入所できない待機児童問題も抱える。法律で従業員一定数以上の規模の事業主が、障がい者を雇用することが義務付けられているように、事業所内保育所の設置についても同様に義務付けてはどうだろうか。昨年度から始まった政府の企業主導型保育事業では、事業主が新設・運営する保育施設などへの公的補助を受けられ、複数企業による共同設置や他企業との共同利用も可能という。このような、官民一体の少子化対策・子育て支援がもっとあってしかるべきと思う。
(名取薫、沖縄科学技術大学院大学広報メディアセクションリーダー)