<南風>未来見つめた島づくり


社会
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 最近、地方移住が一つの流れになりつつある。NHKと明治大学などが2015年12月に公表した調査によると、地方への移住者は09年度から14年度までの5年間で4倍に増加したそうだ。

 一方、久米島町では毎年100人近いペースで人口が減っている。出生数と死亡数を比べた自然減より、転入と転出を比べた社会減の方が多い。

 そんな状況をなんとかしようと、昨年「久米島町第2次総合計画」ができた。行政とさまざまな分野の住民チームとが一緒になって話し合いを重ね、「生まれる」「育つ」「学ぶ」「働く」「暮らす」「老いる」「次世代」の世代ごとに今の課題を分析、必要な施策を整理した。

 その制作過程に関わる中でわかったのは、今いる住民がずっと住み続けられるために必要なことと、交流・移住人口を増やすために必要なこととは、ほぼ同じであるということ。個別に対策を打つのではなく、皆が立場を超えて同じ未来を見つめることから始まるのだと思った。

 そんな島づくりの動きをサポートするため、昨年4月に発足したのが「久米島 島ぐらしコンシェルジュ」。移住定住促進を目的とした相談窓口として、移住希望者への対応や、定住環境の充実のための活動を行っている。

 その一つとして、行政や住民ができることを具体的にまとめたアクションプランも完成した。男女の出会いの場の演出、子育てカフェ、移住者と地元住民との交流の機会づくりなど、楽しそうな案が並ぶ。

 この1年間で、移住希望者リストは100人を超えた。でも、そういう数字に表れる成果より、自分たちの暮らしをよりよくするために何かしたいと、住民が自ら動く機運ができたことのほうが大きな一歩だ。そういう「人」こそが、島を魅力的にしていくのだから。
(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)