<南風>旅、物語づくりの妙


社会
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 斎場御嶽をイメージした舞台。大覚寺僧侶10人が唱える声明の中で、沖縄の神々と祖先に祈りを捧(ささ)げる荘厳花で始まった「嵯峨御流」辻井ミカ華務長のデモンストレーションは、北海道の深山の景、沖縄の海浜の景と続き、桜や藤が艶やかな京の春と赤い御所車の登場で最高潮に達しました。

 日本開催が5年に1度の「生け花インターナショナル世界大会」沖縄大会の一コマです。「天皇家ゆかりの嵯峨御流・辻井華務長が、斎場御嶽と松山御殿(尚順男爵の屋敷)で受けた感動を舞台で表現!?」。期待度満点の事前情報で、早速、テレビ番組を提案し、尚弘子先生ご協力のもと、沖縄海邦銀行の提供でQABに放映してもらいました。

 地域振興で旅のプログラムをつくる時、私たちはそんな物語を大切にします。時空を超えて網の目のようにつながる人と自然、文化、歴史、くらし、そして人と人。それぞれの魅力をつなぎ、掛け合わせていくのです。掘り起こされ磨かれた体験プログラムや交流会・特産品・料理と、それを求める人が出会うことで喜びが生まれます。私たちの活動の理念は「関わる人みんなに喜び幸せ豊かさを!」です。対象は、旅する人、そして、地域の大人や子ども、事業や業界の担い手です。

 みんなの幸せや豊かさは、一人ひとりが主体的にならないと広がりません。本音が出たときから変化が始まることを30年余の経験で体感している私は、時に雷を落とすこともあります。だからみんな真剣です。そんな地味で難しい私たちの仕事にも若手が育ってきました。人が喜ぶことで自分はもっと大きな喜びを得られると気づいた仲間たちです。まだ私たちの仕事はあまり認知されていませんが、小さな組織であっても若くても知的資産を認めてもらえるような活動を続けていきたいと思います。
(開(比嘉)梨香、カルティベイト社長 沖縄海邦銀行社外取締役 元沖縄県教育委員長)