<南風>泡盛の風味を見て考える


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 先日、とある会合で泡盛について話をした。会合のメンバーは比較的年齢が高く、泡盛好きな人や仕事の付き合いで飲む人、かつては毎日飲んでいた人など多彩で、そこで取材で得た泡盛の知識を話したのである。

 内容は泡盛の造り方、黒麹(こうじ)菌や酵母の話、古酒の味わい方、香りや余韻の楽しみ方などが中心だった。その中で「例外もあるけど泡盛はビンでも古酒になる」というと、知らなかった人がほとんどだった。ボクの周りの泡盛好きや泡盛関係者には「ビン熟成」は常識だったので、普通に泡盛を飲む人たちがそれを知らなかったことが意外だった。

 話は変わって4月26日、沖縄国税事務所が泡盛の味や香りについて、誰でもわかりやすく見えるようにした「泡盛フレーバーホイール」を発表した。香り成分は「果実」や「ナッツ」、「バニラ」や「ドライフルーツ」と表現、味わいは「甘味」や「酸味」、「オイリー」など17クラス49用語で見える化されているのである。

 これまで泡盛の風味の表現は製造者や販売者、愛好家などそれぞれの考え方や捉え方が反映され、表現方法はまちまちだった。「泡盛フレーバーホイール」は香りや味わいを科学的知見から整理し、それを共通言語として統一することにより、風味がわかりやすく見えやすくなった。今後は表現の統一によって製造現場や商品開発者の思いが、風味となってダイレクトに消費者に伝わるようになるだろう。

 消費者もこの「泡盛ホイール」の出現により、これまで何も考えずに飲んでいた泡盛の味と香りを確認しつつ、楽しみながら飲むことで泡盛愛がより深まればと思う。また、古酒に関する表現も豊かで、普通に泡盛を飲む人たちが古酒の知識を増やし、古酒の魅力を多くの人に伝えることができればと思うのである。
(嘉手川学 沖縄ふうどライター、沖縄泡盛新聞編集委員)