<南風>「いいね!」と「ポスト真実」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 前々回の「声は届かない」は、ネット上で拡散し、琉球新報ホームページでの「いいね!」は1500を超えました。他方、私の中ではこれとセットのつもりで書いた前回の「ストーリー」は、ネットではほとんど拡散せず、「いいね!」も一桁止まりでした。

 では、私自身の感触として、前々回は上手(うま)く書けて、前回はあまり上手く書けなかったかというと、実はそうでもありません。私に直接寄せられた感想も、前々回が特別良かったということでもなく、むしろ、前回の方が良かったという感想もいただきました。

 違いがあるとすれば、前々回は感情を先行させて書いた半面、前回は理性を先行させて書いたというくらいだったのですが…。

 この違和感について考察してみたとき、ふと「ポスト真実」(客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況)という言葉にたどり着きました。

 ネット社会になり、「いいね!」や「シェア」の数が、対象言論の評価を見る上で分かりやすい指標となりました。しかし「いいね!」などは、対象言論に触れた際、反射的に行われることが多く、その意味で感情的に受け入れやすければ「いいね!」が付きやすいという傾向にある気がします。

 もちろん、「いいね!」を信用すべきでないと言う気はありません。しかし、ネット社会となり、このような目に見える評価、反射的・感情的評価にとらわれ過ぎてしまったことが、「ポスト真実」と表現されるような時代を招いてしまったのではないでしょうか。

 私自身も、「いいね!」の数にとらわれ過ぎず、毎回私の原稿を楽しみにし、丁寧に記事を切り取り、文章を味わってくれる、そんな読者をしっかりとイメージし、表現を続けていきたいと思います。
(白充、弁護士)