<南風>大人が果たす役割


社会
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 かつて、どの学校にもやんちゃな子供たちがいて、他島の子供たちが自分たちの地域で「勝手な行動を起こすことを許さない」というような地域意識があった。先輩・後輩という異年齢の中で上下関係や人間関係を学んでいた。

 今や、携帯電話でのラインやSNSで友達が広がる中「いつでも、どこでも、だれとでも」繋(つな)がりを持てる一方、親が知らないところでいろいろな問題や犯罪に巻き込まれるケースが増えてきている。

 携帯電話は便利ではあるが、子供たちの行動が見えなくなることで、大人が「教える人・育てる人」の関わりが持てない社会となり、学校・地域との関わりが希薄になっているような気がする。

 かつて学校に来ない子は、「山学校」と言って地域で遊んでいた。遊びの中から知恵や「生きる力」を身につけ、地域行事では先頭に立って必要とされる人材として役割を担っていた。

 寂しい話だが、今何らかの問題を抱え、学校に登校できない子供たちが増加傾向にある。本県が抱える格差社会の問題で、未来の宝である子供たちを失望させてはならない。先日のNHK番組で「未来ある子供たち」へのアンケートで「日本の将来に希望が持てますか」の質問に38・4%が希望を持てないと答えていた。

 子供たちが希望を持てる社会にするため、政治・経済界が果たす責任は大きい。私たち大人・地域もいろいろな役割があり、悩みを抱える家庭は、地域の支えなしでは問題解決できないところまできている。

 地域で生を受けた子供たちは、その地域で育て、社会で貢献できるよう支援していく必要がある。学校は地域の皆さんが集い、親しまれる場でなければならない。地域に根差した学校にするためには、優秀な先生も必要だが、有能な先生の採用が求められている。
(田村正人、県空手道連盟強化委員長、県立前原高校教諭)