<南風>シングルマザー


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 知人が、大手企業の部長職に就くシングルマザーを主人公にしたテレビ番組の記事をSNSでシェアし、何人かのシングルマザーの友達がコメントを書き込んでいた。その中には「大企業の部長なら給料も高いし、ベビーシッターや家庭教師も付けられる。年金も心配ないから何の悩みもないでしょうね」というのがあった。以前であれば私も「いいね」を押していたと思う。

 1年前、勤務医をしているシングルマザーと出会った。県外から来て学生結婚し、その後離婚して2人の子どもを育てている。彼女は研修医時代、指導医の信頼を得るため、同僚たちと早朝から夜間まで働いたそうだ。子どもを預けられる親族がいなかったため、給料のほとんどがベビーシッターの費用に消えたとのこと。それは勤務医になった今も同じ状況だという。

 男性が多く働く職場で、彼らと同等の評価を得るためには、彼らと同様に「全エネルギーを仕事に投入」しなければならない。しかし、勤務を終えた後の彼女には、帰路の途中スーパーで買い物をし、夕食を作り、子どもの話を聞いて様子を確認し、風呂に入れて寝かしつけ、後片付けをして洗濯をする、という日常があり、週末には子どもたちのリクエストにこたえ、一緒に過ごす時間をもつ。

 このような家事や育児を、仕事に「全力投入」した後にひとりでこなすと潰(つぶ)れてしまう。そのため、その中のいくつかを人に代わってもらうことで、彼女はなんとか男性たちと同じ職場に居続けられる。経済的問題に重きが置かれるシングルマザーの現状からは見えづらいが、経済的に恵まれていると思われる彼女も困難を抱えながら生きている。

 今、彼女は私たちの支援活動に協力をしてくれている。そして医師としてもシングルマザーの良き理解者である。(秋吉晴子、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄代表)