<南風>理性を使う勇気


社会
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 これまで久米島にまつわることを取り留めもなく書かせていただいたが、私の本業は、久米島高校魅力化プロジェクトである。

 島の高校生の学習環境を充実させ、島内外から選ばれる高校にしよう、というのがこのプロジェクトの目的。ただ、高校教育について考えると、その前の小中学校の教育、さらに卒業生のUターンのためには子育て環境や雇用の充実など、多様な分野に関連していくことがわかった。

 ところで、私の好きな言葉の一つにドイツの哲学者・カントの「啓蒙とは何か」という文章がある。啓蒙というと上から目線のように感じるが、原語には「光で明るくする」という意味があるらしい。

 「啓蒙とは何か。それは人間が、みずから招いた未成年の状態から抜けでることだ。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないということである。人間が未成年の状態にあるのは、理性がないからではなく、他人の支持を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気ももてないからなのだ。」(中山元訳、光文社古典新訳文庫)

 久米島高校魅力化が目指す人材像は、まさに「他人の指示がなくても、自分の理性を使える」ようになること。寮での主体的な生活や、塾で目的を持って学ぶ経験などを通して、自らの意思で考え、動ける人に育ってほしい。

 カントはまた同じ文章の中で、「自分の理性を使う勇気を持て」と読者に呼びかけている。未成年の状態にあるのは、他人のせいではなく、自分に勇気がないからなのだ、と。これは高校生に限ったことではなく、大人にも言えること。自分たちの島、自分たちの未来をより魅力的にするために、勇気をもって、自ら考え動き続けたい。

 半年間お付き合いいただきありがとうございました。
(山城ゆい、久米島高校魅力化事業嘱託員)