<南風>浮気に効く面白い料理


社会
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 本題の前に、「面白い」の語源から。これは日本神話の岩屋戸騒動で、天照大神が岩屋戸から出て光が戻ったのを神々が喜び、「阿那於茂志呂=あなおもしろ」と叫んだことに由来している。明るくなりお互いの面(顔)がよく見えたという意味だ。白は黒(暗闇)の反対なので見える意味だが、目の前が明るくなり感情も明るくなったと広義に使われるようになった。

 くどいが、「赴く」なども「面向く」からきている。私どもは目で見ながら歩行するのでそうなったわけだ。ちなみに夕暮れ時を「黄昏(たそがれ)時」と言うが、段々と暗くなり、人のお顔が判然としないので「誰(た)ぞ彼?」が語源だ。もちろん早朝の薄暗い時は「かわたれ時」と称して「彼(か)は誰?」からきた。

 さて本題の面白い話だが、旧具志頭村在食堂のお品書きが面白かった。料理名は忘れたが、その料理の効能がこう書き記されていた。いわく「浮気に効きます。その理由は聞かないでください」。理由を聞くなというのが極めて面白い。それとも、店主(女性)はご亭主に人体実験して効能を試したのかしらと妄想が広がり、肝心の料理の味は忘れてしまった。

 食堂と言えば、宮古島は狩俣在食堂のお品書きも面白かった。いわく「パパヤー炒りちゃー、パパヤージュース付き」。この韻の踏みようには面白さを通り越して感動すらした。まさに野菜パパヤーとフルーツパパヤーの究極のコラボ。

 市井の食堂のお品書きだって結構面白い。例えば「おかず」や「味噌汁」。ご飯の人格を認めつつ、省略しておかずや味噌汁と言い切る断定の潔さ。そこら辺が大和人は割と律儀なので驚かれるのだろうな。野菜炒め・ライスの表現は律儀そのもので余白がない。もちろん余白とは余裕をも意味するてーげーに他ならないがってことで、さようなら。(渡具知辰彦、県交通安全協会連合会前専務理事)