<南風>日韓共同制作プロジェクト


社会
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 日本映画大学は韓国の国立芸術総合学校(国立芸大)と提携している。相互に相手国で短編映画を撮るプロジェクトも5年目となった。

 日本が監督を出すときは撮影は韓国で行う。スタッフは韓国の学生。翌年はその逆。俳優は両国からキャスティングする。

 韓国の学生たちは日本のアニメや漫画で育っているし、韓国映画やドラマが好きな日本人学生も多いから、すぐ仲良くなる。もともと我々はかなり似ているのだ。と同時に、違いもはっきりしてくる。

 文化や言葉の違いだけではない。映画の作り方は国によって違う。韓国の映画制作はハリウッド・スタイルで、監督の権力が極端に強く、絵コンテを重視する。監督はそのイメージに固執して時に暴君になる。日本流で学んできた学生たちは、そこで必ず衝突するのである。

 私の印象では、改革を怖(おそ)れない韓国人は新しいものに価値を置く。しかし日本人は対立を避け伝承を重んじる傾向が強い。

 双方の違いは違和感となり、ぎくしゃくするが、現場でドロドロになって撮影するうち、方法は違っても目的は同じだとわかってくる。映画人の目的は世界共通、面白い映画を作ることだけなのだ。

 今年は韓国の女性監督が来日し、学生たちは夢中で5本目になる合作映画を撮影している。やはり喧嘩(けんか)は絶えない。だが終わってみれば、深い絆が生まれていることだろう。

 日本映画大学は韓国の他にも北京電影学院、ジャカルタ芸大、台北芸大と提携・交流している。

 安全保障とはミサイルを互いに向け合うことではない。互いの違いと共通点を知り、相手の顔を覚え、異文化に馴染(なじ)むことだ。若者たちが一緒に映画を撮るのは、なかなかよい方法だと私は思っている。
(天願大介 日本映画大学学長映画監督、脚本家)