<南風>「考えたこともない」が一番悪い


社会
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 このコラムでは「差別」の問題を中心に書かせて頂いたつもりであったが、まだまだ書きたりないうちに、とうとう最終回となってしまった。最後は、今年法改正もあった育児休業を通じて差別について考えたい。

 現在日本では、性別に関係なく育児休業を取ることができる。しかし、2016年度の女性の育児休業取得率は81・8%であるのに対して、男性はわずか3・16%。この数字は何を意味しているのだろうか。シングルマザーやレズビアンカップルである場合もあるし、納得して女性だけがとっている男女のカップルもいるだろう。問題は、このことによって、「だから女性は雇いたくない、使えない」などと内心思う(口にしたり、不利益を与えればハラスメントになる)上司や同僚に囲まれて働かねばならない多くの女性達がいるということだ。

 そして、この数字は、女性だけで子どもができるわけではないにもかかわらず、また、現在では家庭科も共修になっているにもかかわらず、そして女性が仕事の能力が劣っているわけでもないにもかかわらず、社会が「子育ては女性がすること」と決めつけ、女性だけに子育てを押し付けている「女性への差別」の結果に他ならない。

 差別はどこから来るのだろう。私自身、沖縄についてはほとんど習ったことがなく、恥ずかしながら、住んでみて初めて、基地に関する激烈な差別を知り、本土との意識の差に愕然(がくぜん)とした。しかし、学ぶことで差別がなくなることは確実にある。「考えたこともない」が一番悪い。

 だからこそ、子ども達には正しい教育が絶対に必要だ。そのためにはまず私達大人がきちんと学ばねばならない。自分自身が生涯、学び続けなければならないことを意識しつつ、これからも発信していきたい。ありがとうございました。
(矢野恵美、琉球大学法科大学院教授)