コラム「南風」 サムエル・ウルマンの詩

 俳人の大半は、どこでも65歳以上の高齢者である。
 女性は若く美しくありたい、男性は若く強くありたいと願う。高齢者には、出所や境遇などにいろいろの違いがあるであろうが、高齢者は大和世、戦争、アメリカ世をよく知る尊いラストランナーであると思う。

 アメリカの施政権下にあり、B円や米ドル貨幣の給料をもらい、仕事に没頭したころと、今の老後の趣味に生きる平穏な暮らしを比べると隔世の感がある。
 昔の県民は老人を敬い、開拓を志して南米移民へ多くの人が出郷し、貿易や漁労などでも海外へ雄飛した県民も多い。
 サムエル・ウルマンは、1840年にドイツで生まれたユダヤ人。51年に両親と共にアメリカへ移住した。アラバマ州バーミングハムで事業を起こし、教育や宗教活動で地域社会に貢献した。著書「サムエル・ウルマン 詩と書翰(しょかん) 『青春とは、心の若さである。』」の中の「青春」の詩に「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う。(中略)ときには、20歳の青年よりも60歳の人に青春がある。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる。(中略)20歳であろうと人は老いる。頭(こうべ)を高く上げ希望の波をとらえる限り、80歳であろうと人は青春にして已(や)む」とある。
 肉体が老いても前進する心の若さが青春であると言っている。アメリカの開拓移民の老に向かう気概と誇りが詩に満ち溢(あふ)れている。
 沖縄は、かつて長寿日本一と言われたが、今の男性の平均寿命の順位は大きく後退した。ウルマンの言う心の若さで以(もっ)て健康増進に励んでほしいと願う。
 質実剛健で、沖縄の戦後復興を推し進めた大正人たちに習い、夢を持ち弛(たゆ)まずに前へ進みたいものだと思うのである。
 老の一句 「医者要らず馬齢を重ね天高し」  章
(宮城章(みやぎあきら)、俳人協会幹事)