コラム「南風」 科学は使いよう


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 私は「研究バカ」だ。
 さらに、科学研究の取り組みや考え方は、一般の方々が日常生活で自然に行っていることの延長線上にあり、生活を豊かにする原動力になると信じている。

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 「この研究の目的は? 知りたいことは何?」
 「この結果から何がわかる? 何に役立つ?」
 これらは社内での日々の会話、かつ、私の頭で常に繰り返す言葉でもある。
 一般の方々が、科学・研究・バイオなどという言葉から持たれる印象は、おそらく「難しい」「オタクだな」「わからない」「すぐには役立たないでしょ」という類いのものであろう。
 すべて正しい。
 研究での作業、議論はオタク的で、短時間で詳細を説明することは困難、必要な知識は専門的で難しい。大成功をおさめた成果でも、残念ながら、「明日すぐに皆さんのお役に立つことはできない」。
 さらに、これまでの日本では、さまざまな研究成果が日常生活を激変させたものの、それら全てが、生活を豊かにしたかと問われれば、こちらも残念ながら、「そうとは限らない」。
 科学とはそういうものなのだ。科学の成果は「使いよう」なのである。どんなことも良い面と悪い面があるという物事の道理は、当然、科学にも当てはまる。
 それでも、もちろん私は、科学に対して並々ならぬ魅力と可能性を感じている。だからこそ私は、科学の使いようについて、「一般の方々にこそ、少しでも感じたり知ったりしていただきたい」と切に願っている。
 一方、科学はその成果だけでなく、そこに至る道のりにも大きな価値がある。科学研究という「目標を定めたオタク的な取り組み」は、研究とはあまり関係がない他の業種はもちろん、普通の日常生活さえも豊かにできる大きな可能性を秘めているのである。
(塚原正俊(つかはらまさとし)、バイオジェットCEO)