コラム「南風」 現状打破の教育

 受験の季節ですね。私は日本の受験戦争の渦中で育ちましたが、高2途中からカナダに留学し、全く異なる制度の中で勉強しました。英語が聞き取れず、少人数で討論中心に進む授業では発言もできず、授業後に質問をしに行っても、涙があふれ声も出ない有様でした。今まで勉強してきた英語は一体何だったのかと。

試験も暗記ものはあまりなく、電卓や辞書まで持ち込み可でまるでカンニングOKと言われているようでした。しかしだから楽かというと全然違いました。経済学や哲学の試験は小論文を書くものが中心で、最初の頃は、真っ白な用紙に2~3行書いたところで書くことがなくなり、焦りの中で茫然(ぼうぜん)と時間が過ぎていきました。
 2年目になりやっと授業もわかり、読み書きの速度も上がりました。自分が指されるのを待っていても機会は来ないので、今話している人が息つぎする瞬間を逃さず発言しました。国際バカロレア(IB)というカリキュラムで勉強したのですが、2年目の最後に総合試験があり、哲学では4時間ひたすら論文を書くという形式でした。時間切れ直前でペンを置いたときは、ああ、ここまで来た、という感慨がありました。
 この経験は、今にしてみれば、与えられた問いに「正答」を出していくという受動的な学習から、問い自体を自ら見いだし答えていくという能動的な学習への脱皮の過程だったと思います。現状維持の教育から現状打破の教育への移行とも言えるでしょう。ちなみにこの留学プログラムはユナイテッド・ワールド・カレッジといって、国際理解教育を目的とする、世界中にある学校網です。日本の窓口は経団連、選考は高1が対象。中高生の皆さん「UWC日本協会」で検索してください。9日には大阪で説明会、奨学金もあります。出願は4月5日締切です。
(乗松聡子(のりまつさとこ)、ピース・フィロソフィーセンター代表)