コラム「南風」 名前


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 「りんご」「えんぴつ」「窓」「空」「海」「でいご」「服」「お茶」。
 今、目の前にあるすべての物に「名前」がついている。ごく当たり前のことではあるが、もし名前が無かったら、とても不便だ。よくよく考えてみると、これらの名前は全て「誰かがつけた」はずだ。

 すごい。
 「りんご」はやっぱり「えんぴつ」でなく、「りんご」という響きがその香りや味にしっくり合う。誰かが本気で名付けたに違いない。すばらしいセンスだ。
 当方がこれまで「本気で」名前を付けたのは4回。40余年生きてきて、たった4回なのだから、とてつもなく少ない。名付け素人だ。
 そんな「ど」素人にも、名付けの場面は訪れる。内訳は、子どもの名前が2回、会社の名前、商標が各1回、である。
 研究者である当方が「本気で」何かを行うとき、必ず最初は「とことん調べる」。いわゆる職業癖だ。
 子どもの名付けの際も、文字数、語感、バランス、意味など徹底的に調べた。
 その時初めて知った。
 女の子の名前は男の子と違い、基本「ひらがなで2または3文字」限定だった。拗音(ようおん)を除けば、例外は「さくらこ」「かおるこ」のたったの二つ(当時)。となると、組み合わせの数は把握できる範囲となり、リストさえ作ることができる。結果として、名付けは「リストから選ぶ」あるいは「4文字以上を創作」のどちらかになる。当時このことに気付いたおかげで「闇の中でのパズル」から少し解放され、楽になった。
 当社の名前「バイオジェット」、と食品向け商標「琉古風土(りゅうこふーず)」。これらも同様に熟慮した。
 本気で名前を付けるとき、そこには間違いなく自分らしさがにじみ出る。他人から何と言われても、名前に慣れてしまっても、「本気の想い」は大切にしたい。
(塚原正俊、バイオジェットCEO)