コラム「南風」 「傷の歴史」に向き合う


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 4月下旬、地元バンクーバーで「和解のための対話」集会-カナダ史上最悪のジェノサイドと言える先住民寄宿学校制度について、体験者の話を聞きながら学ぶ2日間の会に参加しました。

 寄宿学校制度は1870年代に始まり、全国130余の学校に通算約15万人の先住民の子どもたちが送られ、最後の閉校が1996年。子どもを親元から引き離し、教会が運営する施設で、自らの言語、文化、信仰を禁じた強制同化政策でした。民族語を話したら舌に針を刺すといった拷問や性的虐待が横行、栄養失調や伝染病などで、一時期は寄宿学校での死亡率は5年間で30~60%にも上ったという報告もあります。集会では体験者が、修道女に「『インディアン』を洗い流さなきゃ」と体を洗われた話、懲罰として裸で厳寒の屋外に一晩放置された話などを聞き、言葉を失いました。制度が廃止された今も、体験者の子孫にまで心の病、自殺、依存症、家庭崩壊等の影響が出ています。
 会合では全員が円形に座りました。家庭内暴力に取り組んできた参加者、ロスさんは問いかけます。「この中に一度も傷つけられたことがない人はいるか。また一度も人を傷つけなかった人はいるか」沈黙。「誰だって、傷つくし傷つける。先住民族だけが『治すべき傷』を持つとは思わないで」。そこに主客の差はなく、それぞれが、自分自身の「傷の歴史」に向かい合う場となりました。その間、私は沖縄からの波動をずっと感じていました。
 早いもので「南風」もあと3回。もうすぐ沖縄に行き、『沖縄の怒』共著者ガバン・マコーマック氏と、シンポ「沖縄の〈怒り〉をどう伝えるか」に出ます。「沖縄の平和創造と尊厳回復を求める100人委員会」主催、5月20日午後5時半~8時、沖縄国際大学3号館105教室。お会いできるのを楽しみに。
(乗松聡子、ピース・フィロソフィーセンター代表)