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沖縄戦伝える“メリケン粉袋”など32件 新収蔵品展 「託された記憶、感じ取って」 県平和祈念資料館


社会
沖縄戦伝える“メリケン粉袋”など32件 新収蔵品展 「託された記憶、感じ取って」 県平和祈念資料館 祖母が大切にしていたメリケン粉袋を見つめる武田亜樹さん=1日、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 県平和祈念資料館の新収蔵品展が1日、同館1階企画展示室で始まった。1945~46年ごろに石川収容所(現うるま市)で使用された木綿のメリケン粉袋など、2021~22年度に新たに寄贈された資料32件が展示されている。

 メリケン粉袋を寄贈したのは那覇市の武田亜樹さん(45)=那覇市=で、昨年亡くなった祖母の島袋雪子さんが「これがあったから生きられた」と大切にしていた。当時20歳くらいだった雪子さんは、戦時中は本島北部の山に避難し、食料がなく苦しんだという。米軍に捕らわれ、収容所ではこの袋を持って配給の列に並んだといい、亜樹さんは「祖母はあまり戦争のことを話したがらなかったが、一緒に展示されている写真を見て、当時の収容所の状況がよく分かった。祖母が生きてくれて本当に良かった」と目を潤ませた。袋の表側には米国からの支援物資を送った団体のマークが入っている。資料館の収蔵品には麻の袋はあるものの木綿の袋はなく、「袋をズボンに仕立てた」といった証言があっただけだったという。

 このほか、南城市の宮城秀雄さんが寄贈した祖父の源吉さんの1955年の死亡告知書や沖縄戦当時県警察部長だった荒井退造氏の家族写真なども寄贈された。死亡告知書は戦後、米軍占領下で日本の法律が適用されず復員処理が遅れていたため、旧厚生省が55年に事務官を沖縄に派遣し、集中的に発行したという。

 県平和祈念資料館の前川早由利館長は「戦後79年たち、悲惨な戦争の教訓を語り継いでいくため、戦時中や終戦直後の資料が重要になっている。資料に託された記憶を感じ取ってほしい」と述べた。企画展は入場無料。6月10日まで。

 (中村万里子)