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『皆さま、ごきげんよう』 斬新なリフレインの効果

 (C)Pastorale Productions― Studio 99

 グルジア(現ジョージア)出身の名匠イオセリアーニの新作は、1996年の大傑作『群盗、第七章』を彷彿とさせる近年出色の出来栄え。近年といっても、ほぼ4年に1本の寡作ぶりだし、シニカルなのに癒やされる群像コメディーという持ち味は常に変わらないのだが、今世紀に入って以降の作品はいずれも毒気が薄まっている印象だった。それが80歳を過ぎて発表した本作では、尖った感性を一気に取り戻したかのように若さがみなぎっているのだ。

 アパートの管理人で武器商人の男と、骸骨集めが趣味の人類学者。悪友同士の二人を軸に、現代のパリに暮らす人たちの日常が、フランス革命時のギロチン刑やどこかの戦場の模様を絡めて描かれる。現代のパリがそんな血なまぐさい場所と並列に扱われたり、都市の壁に突然現れた扉が楽園に通じていたりするのは、今ある現実の曖昧さ、はかなさを表現していると解釈したら野暮になるだろうか。

 だとしても確かなのは、斬新な“繰り返し(リフレイン)”の効果である。本作では、同じ俳優が演じる別の時代(国?)の別の人物が同一人物であるかのように同じふるまいを繰り返す。パリでも戦場でも同じように黒煙が舞い上がり、音楽が奏でられる。人類学者が骸骨から再現した顔が、ギロチンに処された貴族のものなのか、悪友への友情の表れなのかは、どうだっていい。重要なのは、現代のパリで首だけの彼が再現=リフレインされること。何て映画的なのだろう! ★★★★★

監督・脚本:オタール・イオセリアーニ

出演:リュファス、アミラン・アミラナシュヴィリ

12月17日(土)から全国順次公開


(共同通信)