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チェスのメソッドに学ぶ

 ゴアさんの自宅で将棋盤を広げる

 今年の夏、私の人生に大きな影響を与える出来事がありました。それはチェスの『ステップメソッド』との出会いです。

 とてもシンプルで分かりやすく体系化された、チェスを学ぶためのワークブック。まるで楽譜のような装丁で、レッスンに通うのが楽しくなるようなカラフルで素敵な教材です。

 ヨーロッパ選手権の会場でその存在を知り、そこのチェス関係のブースで、入手でき得る限りの本を買い込み基本編の1巻から解き始めました。

 私の夢の一つは「将棋のメソッドを作る」ことです。幼い頃に音楽を習っていて、優れた教則本に触れる機会が多く、将棋でも体系化されたメソッドがあればもっと多くの人に広がると思っており、10年前にこれをライフワークにしようと決めてから、ずっと考え続けています。

 「どうぶつしょうぎ」はその構想の中の一つの形です。

 そして出会ったのが『ステップメソッド』。ぼんやり頭の中で描いていたものが、チェスの世界にはすで存在していたのです。ぜひこの作者にすぐに会いたいと、メソッドの存在を教えてくれたオランダの木下さんに強くお願いしました。

 しかし夏の訪問中にはスケジュールが合わず、そして再び機会が訪れたのが10月。ドイツのゲームフェアの後にオランダへと足を延ばしました。

 木下さんに紹介していただいた作者のコアさんのご自宅へ。そこで、将棋を世界に広めたいこと、そのために教材を作りたいこと、ステップメソッドに出会って感動したことをお伝えしました。

 1987年に始めたメソッドは、いまでは10カ国語に訳されて世界に広がり、連日問い合わせが来るそうです。

 1巻から6巻までの基本編と、それぞれのレベルの補助教材、そして指導者向けの本で成り立っています。

 “ステップ1”はいわばゲームの前の基礎編で、駒の動き方に始まって駒の取り方、チェック(王手)やメイト(詰み)の方法を学びます。

 指導者用には、教え方のポイントや楽しみながら理解するためのミニゲームが数多く掲載されています。この“ステップ1”がとても大切で、子どもたちはそれを1年かけて教わるのだそうです。

 つまり、チェスを習い始めてから全ての駒で実戦を指すまでは、1年かかるということです。

 メソッドについて多くのことを教わり、コアさんに「どうぶつしょうぎ」と将棋を紹介しました。あっという間に時間が経ち、次回は私の作ったメソッドを持って報告に来ることを約束して、ご自宅を後にしました。

 帰国後、さっそく将棋のメソッドの執筆を開始。教え方についてはまだまだ悩むことが多いですが、コアさんのように年月をかけて工夫を重ね、多くの方に伝えられるものを作り上げたいと思っています。来年もよろしくお願いします。(北尾まどか)


(共同通信)