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『ミューズ・アカデミー』 ドキュメンタリーとフィクションが混然一体

 (C)P.C. GUERIN & ORFEO FILMS

 ミューズ(女神)とは、芸術家の創作意欲をかき立てる女性のこと。ゴダールにとってのアンナ・カリーナやウォーホルのイーディ・セジウィック、本作にも登場するダンテのベアトリーチェなどが代表例だろう。『シルビアのいる街で』のホセ・ルイス・ゲリンの新作は、実際にバルセロナ大学でミューズを研究するピント教授の講義風景=ドキュメンタリーと、受講生たちとの私生活=フィクションが混然一体となったユニークな映画だ。

 当然ながら、私生活のパートを担う受講生たちは本物なのか女優(全員女性)なのかが気になる。教授の妻もしかり。彼女たちにカメラを意識させないように(あるいはドキュメンタリーを装うために)望遠レンズが用いられ、ガラス窓越しや鏡越しの撮影が多用されている。

 一般に窓や鏡の反射を利用した映像は美しく、とても映画的だ。理由として分かりやすいのは情報量が増える効用だろうが、他にもフィルター(幕や緩衝材)の役割や二重性という意味も持たせられる。本作で言えば、ドキュメンタリーでありフィクションでもあるという二重性。さらに、教授のアカデミックな顔の裏に潜む俗っぽさというメタファーとしての二重性も成り立つ。もはやアカデミーからもドキュメンタリーからも程遠い後半の展開はケッサクだ!

 “二重性”というテーマをこれほど美しく視覚的に表現できるゲリン監督。世界的な評価はダテじゃない。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本・撮影:ホセ・ルイス・ゲリン

出演:ラファエレ・ピント

1月7日(土)から全国順次公開


(共同通信)